2007年10月15日

イギリスの法曹、かつら廃止へ?

今日も昨日に引き続いて柔らかい話題でいきましょう。アメーバに以下のようなニュース記事が出ていました。
http://news.ameba.jp/2007/07/5812.phpイギリスの裁判所にて、裁判官の白カツラ姿が見られなくなる?
7月15日 13時45分
【ロンドン 13日 ロイター】
 イギリスの法廷弁護士や裁判官が被る白カツラ。数世紀にわたって続いてきたその伝統が刑事事件以外の裁判の場では廃止されることになった、とイギリスの司法当局が12日、明らかにした。

 首席裁判官であるフリップス・オブ・ワース・マトラヴァース卿は、新しい法廷服の規定のもと、17世紀からイギリスの法曹界で着用されてきた、馬の毛製の白カツラを裁判官が被るのは刑事裁判のみで、民事裁判や家庭裁判所では廃止されると発表。ウィングカラーまたは台襟と呼ばれる、首のまわりに着用される白い細長い綿布も、改革に従い同様の扱いとなる。

 フィリップス卿は「現在、最高裁の裁判官は担当の管轄地区と季節ごとに多い場合は5種類ものガウンを使い分けています。各界に諮問したところ、ガウンの数を簡略化するという決断に至りました」とし、今後は色とりどりのガウンの代わりに1種類で間に合うようになると話した。

 03年に行われた法廷服の見直しでは、解答者の3分の2以上が民事裁判においてはカツラ着用の廃止に賛成したが、そのほとんどが刑事裁判では依然として着用すべきだ、と回答した。

 カツラ着用に反対する者は、カツラが時代遅れで着け心地が悪く、そして高価であることを理由として挙げた。肩まで届く儀式用カツラは1,500ポンド/約37万2100円(1ポンド=248.06円)であり、弁護士が着用する短めのカツラでも一つにつき400ポンド/約9万9227円するという。

 しかし、廃止に異議を唱える弁護士の中には、カツラが権威と匿名性を与えていると感じる者もいた。

 フィリップス卿は「法廷服について統一見解は決して得られないものの、改革が必要だということについては賛成意見が幅広く見られました」と話した。

※この記事はロイター通信社との契約のもと、Amebaニュース編集部が日本語に翻訳しています。


 イギリスの刑事法院ではバーの中の法曹は鬘(かつら)をつけているという事は知っていました。刑事法院での鬘は当面維持されるようですね。
 ところで、知りあいがケニアに旅行した時に裁判を傍聴したら、ケニアは元英領なのでイギリス式の法廷で、黒人の弁護士が金髪だか銀髪のWig(鬘)をつけて弁論していたそうです。exclamationその友人はそれを見て思わず笑いそうになったということですが、エキゾチックな話ですね。
posted by 一法律学徒 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 外国法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月14日

日本では何語で裁判するのですか(留学生よりの質問)?

 今日は少し柔らかめの話題でいきましょう。外国法が好きな私が留学生より聴いたエピソードを1つ紹介します。
 学部時代に留学生との交流パーティーで、インドからの留学生の方とお話したことがありました。その方は法学を専攻されていたのではないですが、私が法学部の学生と分かると、「日本では裁判って日本語でするんですか?法廷では日本語を使っているんですか?」と私に質問してきました。
 
 「日本では当然日本語で裁判しますよ。インドでもインドの言葉でするでしょう」と答えると、そのインド人留学生は、「インドの言葉1つだけではなくたくさんあります。インドでは裁判の制度イギリスの植民地になってから導入されました。それまでそのような制度なかったのでインドの言葉で裁判することできません。また、インドのもともとあった言葉たくさんあるので統一できません。ローヤーやコートという概念を示す言葉もそれまでのインドにはありませんでした。だからインドでは英語で裁判します。日本でも江戸時代までは昔のやり方でしていたのでしょう、だから日本語で大丈夫なんですか?」と答えられたのにはびっくりしました。私が、明治期の立法者が「権利」とか「抵当権」などといった日本語を作ったという話をすると、「その人たちえらいですね、大変だったでしょうね」と感心しておられました。明治時代の先人がいなければ日本では今何語で裁判をしていたのでしょうか。先人に感謝!
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2007年07月17日

フランスの陪審制度について

X-200702082334162966.jpg 右はフランス司法省サイト(http://www.justice.gouv.fr/index.php?rubrique=10031&ssrubrique=10033&article=12027)に掲載されている重罪院公判廷の図です。フランスにおいては、法定刑が10年以上とされる懲役刑・禁錮刑(日本と違い懲役・禁錮刑とも労役の強制義務はなく、収容される施設が異なるだけです)が科せられる重罪(crime)については、職業裁判官3人、陪審員9人から構成される重罪院という裁判所が管轄権を有します。
 重罪院は各県庁所在地ごとに3ヶ月ごとに開廷される非常設の裁判所です。非常設であるのは一般市民である陪審員を長く裁判所にとどめておくことができないからです。
 日本の裁判員制度もフランス重罪院の制度をモデルにした面が大きいようです。

 フランスの陪審制は、職業裁判官と一般市民から抽籤で選ばれる陪審員が協同して事実認定を行い、有罪の場合には量刑判断も行うというものです。
 上の図に掲載されている重罪院公判廷に登場する人々について簡単に解説を加えます。
○法壇の上にいる3名の職業裁判官:赤い法服を着用しているのが裁判長(président)です。日本の高裁に相当する控訴院(cour d’appel)の部長判事か陪席判事が重罪院の裁判長となります。
黒い法服を着用している裁判官が陪席判事(conseiller)です。重罪院の陪席判事は控訴院判事か、日本の地方裁判所に相当する大審裁判所の裁判官から選ばれます。
○陪審員たち(jurés):裁判官脇にいる人々です。一般市民から抽籤で選ばれます。その人数は、第一審では9人、控訴審では12人です。
○控訴院の上席検事(avocat général):重罪院に立ち会う検察官は控訴院検事局の検事長または上席検事です。上の図では左から2番目の壇に座っています。図では黒い法服を着用していますが、私がパリの重罪院を傍聴したときの立会い検察官は裁判長と同じ赤い法服を着用していました。検察官はフランスでは裁判所に附置された検事局(parquet)に所属する司法官(magistrat)です。社会を代表して法の適用を裁判官に要求する職務、つまり公訴の維持・追行を行います。
○被告人の弁護人(avocat de la defence):右の席に座っている二人です。フランスでは弁護士も黒い法服を着用します。私が傍聴した法廷では、被告人の席は弁護人の席のすぐ近くにあり、弁護人と相談がしやすいような構造になっていました。
○私訴原告人代理人弁護士(avocat de la partie civile):一番左の席に座っている黒い法服を着た弁護士です。フランス法では、刑事裁判所に対して犯罪によって被害を受けたと主張する人や一定の社会団体が損害賠償請求権を行使することができます。この訴えを私訴、犯罪被害者などの損害賠償請求権を行使する人や団体を私訴原告人(partie civile)といいます。私訴があった場合には、検察官は事件を不起訴にすることはできません。私訴原告人は公判前の下調べの手続きである予審の段階から、予審判事に対して証拠の収集を要求することなどができます(予審の段階で公判に付すだけの証拠がないとされた場合には免訴といって手続が打切りになります)。
 その結果、私訴原告人は刑事事件で予審判事が集めた証拠を民事上の請求のための立証に使えることになります。

 フランスの陪審制度については、今後ともフォローしていく予定です。
posted by 一法律学徒 at 01:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 外国法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

フランスの予審制度、合議制へ

j@Y@.jpg写真はフランス破毀院刑事部の法廷です。破毀院は司法裁判所の破毀審で、日本でいえば上告に相当する破毀申立(Pourvoi en cassation)を受理して事実審の判決の法令違反を審理する裁判所です。しかし破毀院は日本の最高裁とは違い純粋な法律審であり、事実審の事実認定には踏み込みません(刑事事件の再審請求は例外)。また、破毀院が原審判決を破毀した場合には必ず事実審に移送(Renvoi)しなければならない原則となっており、フランス法では破毀審は「第三審」とは捉えられていません。刑事部については、他の法廷が非公開なのと異なって、公開が原則とされているため、傍聴席が設けられています。

 フランスでは、1808年の治罪法典(Code d'instruction criminelle)以来、日本では捜査にあたる予審を主催し、勾留などの強制処分を行う権限を有するのは予審判事(juge d'instruction)でした。身分上は公判裁判官や検事と同じ司法官ですが、その刑事手続における権限が強大なため、ナポレオンは「フランスにおいて一番強大な権限を有している者は、予審判事である」と述べたそうです。
 そのフランスでの予審手続を改正する法律が今年3月にフランス議会を通過したようです。
 2007年3月5日の法律第291号というのがその改正法律です。原文が掲載されているフランス本国の法令サイトはここをクリックしてください。
 制定のきっかけとなったのは、2000年末に検挙された児童虐待の冤罪事件(ウトロー事件)でした。同事件では被疑者が多数にのぼったにもかかわらず、単独の予審判事が一人で予審を行ったことが問題とされていました。国立司法官学院を出たばかりの若い予審判事が被告人に自白を強要するなどの行為を行う一方で、被疑者と被害者とされる児童の対質も行わないなどの問題が公判において発覚し、パリの重罪控訴審ではパリ控訴院検事長自らが無罪論告を行い、司法大臣も謝罪しています。
 本法では、collège de l'instruction という複数の予審判事による予審体が設けられ、事案によっては単独予審判事ではなく、複数の予審判事によって予審を行うこととなりました。
 フランスでは2000年6月の無罪推定法以来、予審判事とは別の管理職の裁判官(大審裁判所所長・主席副所長・副所長)が「自由と拘禁判事」として勾留権限を行使するなど「二重の視点」によるチェックという観点からの法改正がなされてきました。本法もその一環といえるようです。
 また、警察留置段階での取り調べにおける録画が義務化されるなどの改革もなされているそうで、日本における取り調べ可視化や捜査について考える上でも参考になりそうな改革といえそうです。
posted by 一法律学徒 at 23:38| Comment(7) | TrackBack(0) | 外国法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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