2007年11月11日

現職裁判官ブログ「かけ出し裁判官Nonの裁判取説 」

img_kakedasisaibannkan.jpg写真は八橋一樹(ペンネーム)裁判官著のエッセイ「かけ出し裁判官の事件簿」です。この夏出版されたばかりのようですが、素顔の裁判官の生活が描かれていてとても面白いです。その御著者のブログを紹介します。 
今日は現職裁判官の方のブログを紹介します。「かけ出し裁判官Nonの裁判取説」というブログを、 エッセイ「かけ出し裁判官の事件簿」の御著者の裁判官の方が開設しておられます。
 現職裁判官のブログということで、法律実務家の方だけがおうかがいするような場所か、あるいはお堅い記事ばかりが並んでいるのかな、と思ったのですが、裁判制度を一般市民向けに解説していたり、裁判官の生活の諸々や素敵な風景・お作りになられた料理にいたるまで、何回でも読みたくなる記事ばかり掲載されています。
 つい数日前に訪問者数が10万を突破されたそうで、今後とも楽しみなブログです。Nonさんよりリンク許可をいただいたので以下にリンクさせていただきます。
 
「かけ出し裁判官Nonの裁判取説」http://blogs.yahoo.co.jp/judge_nori

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2007年06月30日

矢野伊吉元判事についてー財田川事件ー

 先日の記事で袴田事件を担当された熊本典道元裁判官のブログについて紹介しました。
 同様の、裁判官として事件を担当された方が退官後にその再審請求に関わられた事件として、財田川事件があります。
 高松地裁丸亀支部の支部長をしておられた矢野伊吉裁判官は、確定した強盗殺人事件の死刑囚であった谷口繁義さんからの裁判所宛の手紙を発見し、再審請求事件として取り上げて審理を開始します。
 当時の捜査記録を精査し、請求人である谷口さんや当時の捜査関係者などを尋問していくうちに、無実であるとの確信を抱いた矢野裁判長は、再審開始決定を起草しますが、陪席裁判官の反対によって再審開始の決定を出すことができなくなりました。
 そこで矢野裁判長は裁判官を退官し、自らが弁護人となって再審請求を行いました。後に矢野弁護士は高松弁護士会より公務員として担当した事件を弁護士として取り扱うことを禁ずる弁護士法に触れる行為をしたとして懲戒処分を受けてもいます。
 財田川事件の再審請求は地裁(矢野裁判長の後任裁判官による棄却)・高裁と棄却され、最高裁に特別抗告されます。
 最高裁は昭和51年、地裁・高裁の再審請求棄却決定に審理不尽の違法があるとして本件を地裁に差し戻す旨の決定をし、再審開始の要件について判示したいわゆる「財田川差戻し決定」を出しますが、その中で異例なことに、矢野弁護人の再審請求に際しての活動が批判されています。以下にそれを引用します。
再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
昭和四九年(し)第一一八号
同五一年一〇日一二日第一小法廷決定
最高裁判所刑事判例集30巻9号1673頁
裁判官 岸盛一 下田武三 岸上康夫 団藤重光
第二 当裁判所の判断
 本件記録を精査し、職権により原決定及び原原決定の当否を審査すると、当裁判所は、原決定には、本件再審請求の理由として、刑訴法四三五条六号に該当する事由があると解すべきであるのにこれを看過し、かつ原原審が申立人の請求を棄却しながらも、本件確定判決の事実認定における証拠判断につき、前記のような数々の疑問を提起し上級審の批判的解明を求めるという異例の措置に出ているにもかかわらず、たやすく原原決定を是認した審理不尽の違法があり、原原決定にも、審理不尽の違法があると考えるものである。
 その理由は以下のとおりである。(なお、矢野弁護人は、正規の抗告趣意書を提出したほか、累次にわたり印刷物、著書等により、世間に対して申立人の無実を訴え、当裁判所にもそれらのものが送付されたが、弁護人がその担当する裁判所に係属中の事件について、自己の期待する内容の裁判を得ようとして、世論をあおるような行為に出ることは、職業倫理として慎しむべきであり、現に弁護士会がその趣旨の倫理規程を定めている国もあるくらいである。本件における矢野弁護人の前記文書の論述の中には、確実な根拠なくしていたずらに裁判に対する誤解と不信の念を世人に抱かせる虞のあるものがある。もつとも論述中に裁判所の判断と部分的には合致する点もある〔なお、その論述中若干のものは、既に原原決定が指摘しているところである。〕が、論述全体を通じてみるならば、当裁判所の判断過程及び結論とはおよそかけはなれたものであることは、以下の説示と対比すれば明らかであろう。)(以下略)

 これについて、ルポライターの鎌田慧氏は、「騒ぎたてなければ、正義は降ってこない。矢野の活動なくして最高裁はこのような決定をおこなったであろうか」と論じておられます。
 財田川事件については、鎌田慧氏の「死刑台からの生還」(岩波同時代ライブラリー)、同「非国民ー法を撃つ人々」(同前)に詳しいですが、他に、矢野伊吉元裁判官の著書として「財田川暗黒裁判」(立風書房)、ネット上で閲覧可能なものとしてニッポン・レポートがあります。

 なお、財田川差戻し決定中の再審開始の要件(刑訴法435条6号)について判示した部分について、以下に引用します。

本件再審請求の理由は、その形式も不備であり、その内容また必ずしも明確とはいえないが、その趣旨を汲みとるならば同法四三五条六号所定の事由の主張もなされているものと解するのが相当である。
 ところで、同号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」とは、確定判決における事実認定につき合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいうものと解すべきであり、右の明らかな証拠であるかどうかは、もし当の証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたとするならば、はたしてその確定判決においてされたような事実認定に到達したであろうかどうかという観点から、当の証拠と他の全証拠とを総合的に評価して判断すべきであり、この判断に際しても、再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的疑いを生ぜしめれば足りるという意味において「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が適用されるものである(当裁判所昭和五〇年五月二〇日第一小法廷決定・刑集二九巻五号一七七頁)。そして、この原則を具体的に適用するにあたつては、確定判決が認定した犯罪事実の不存在が確実であるとの心証を得ることを必要とするものではなく,確定判決における事実認定の正当性についての疑いが合理的な理由に基づくものであることを必要とし、かつ、これをもつて足りると解すべきであるから、犯罪の証明が十分でないことが明らかになつた場合にも右の原則があてはまるのである。そのことは、単なる思考上の推理による可能性にとどまることをもつて足れりとするものでもなく、また、再審請求をうけた裁判所が、特段の事情もないのに、みだりに判決裁判所の心証形成に介入することを是とするものでもないことは勿論である。
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2007年06月29日

「裁判官の良心」熊本典道元裁判官ブログ

 1966年に静岡県清水市で発生した味噌会社専務一家強盗殺人事件(袴田事件)は、犯人とされた元被告人袴田巌氏の死刑が確定した後も無実を訴えて再審請求がなされたものの、地裁・高裁と再審請求は棄却され、現在最高裁に特別抗告が係属中です。
 その袴田事件の確定第一審に左陪席裁判官として関与された元裁判官の熊本典道氏が最近ブログ「裁判官の良心」を開設されておられます。
 熊本氏は袴田事件の確定第一審第2回公判から主任裁判官として事件を担当され、無罪であるとの心証を抱かれて一度は無罪判決を起草したものの、裁判長ともう一人の陪席裁判官を説得できずに結局死刑判決を書かされることになりました。その後熊本氏は退官し弁護士・大学講師を歴任されましたが(ブログ「裁判官の良心」によると現在は弁護士登録も抹消されておられるようです)、今年になって「袴田事件では無罪の心証を抱いていた」という事を公表され、裁判所法が定める「評議の秘密」を漏らしたのではないかとの批判も受けておられます。
 ご本人はその事について、別に特別なことをしたわけではない、「過ちを改めるにはばかる事なかれ」という先人の言葉を引用して
「何事にもいえることである」と昨日(6月28日)の記事で述べておられます。フランスの冤罪事件(パトリック・ディルス事件)で「司法は、自らの誤りを認めなければならない」と破毀院検事が論告した事と熊本元裁判官が引用された言葉がオーバーラップするようです。
 皆さんにも熊本元裁判官のブログを拝見される事をお薦めします。リンクはしませんが、「裁判官の良心」で検索するとすぐに見つかります。
posted by 一法律学徒 at 01:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 法律家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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