2007年10月21日

富山の冤罪事件(氷見事件)の弁護のあり方について

 先日の記事で富山の再審無罪になった冤罪事件について、橋下弁護士(大阪弁護士会)が「杜撰な弁護活動」と批判していた事について触れましたが、当該事件についての元被告人の方のコメントが記事になっていたので以下に転載します。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071013i114.htm?from=navrより転載(なお、元被告人の氏名・年齢に関する部分は引用者において▲▲として伏せることにします。元被告人は公人ではなく、また冤罪の被害を受けられた方であるからマスコミが公表していてもそのまま引用することは不適切と判断しました。)
「国選弁護人、何もせず」富山冤罪の日弁連調査で▲▲さん
 富山県氷見市の冤罪(えんざい)事件で、日本弁護士連合会は13日、婦女暴行・未遂容疑で誤認逮捕され、無罪判決を受けた元タクシー運転手▲▲▲さん(▲▲)から、逮捕当時の弁護活動などに関する聞き取り調査を公開で行った。

 ▲▲さんは「国選弁護人は何もしてくれなかった」と批判した。

 ▲▲さんは、2002年4月の逮捕直後に行われた1回目の接見について、「弁護士なら助けてくれると思い容疑を否認した。『調査する』と言ってくれたが、その後、何の連絡もなく、次の接見では被害者2人に被害弁償金を支払うよう勧められた」と明かした。「接見は2回でいずれも10分程度だった」とし、消極的な弁護のあり方を非難した。
 県警の捜査については、取調官に脅された経験を話し、「(冤罪事件をなくすには)検察だけでなく警察の取り調べも録画するべきだ」と主張した。
 日弁連は、当時の国選弁護人から、今月下旬にも聞き取り調査をする予定で、年内にも調査報告書を公表する。
(2007年10月13日22時30分 読売新聞)


 検察段階だけでなく警察段階から(当然任意同行の過程から)録音・録画する必要があるということには全く同意できます。
本件の弁護人の活動についてですが、接見が2回でいずれも10分というのが事実であれば、いくら地方であったとしても被疑者との意思疎通が不十分すぎるといわざるを得ないでしょう。
 ただ、私はこの事件の詳細を記録等を見て知っているわけではないのですが、この事件では国選弁護人が無罪主張をすることは極めて困難であった可能性があったと思います。日本の刑事裁判においては、公判前に検察官から弁護人に対して開示される証拠は原則的に検察官が裁判所に対して証拠請求するものだけです。被疑者が当初は無実を訴えたことがあったにせよ、自白に転じてしまっていたようですので、弁護人としては検察が開示した記録だけを読んで「こういうことか」と納得して弁護活動を行っていたのではないでしょうか。報道では、再審無罪になった方が履いておられた靴と、現場の足跡が異なることはすぐに判明できた筈だと言われていますが、それはあくまでも今になってから言えることで、当初の開示記録だけからそのようなことが言えるのか、検討される必要があると思います。
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2007年10月18日

検察OBの「冤罪防止に関するホームページ」

garyuubai.jpg写真は宮城刑務所内の天然記念物「臥龍梅」です。最高検刑事部長や仙台・広島の両高検検事長を歴任された小嶌信勝先生(現弁護士)は、仙台の高検検事長時代に宮城刑務所で帝銀事件の平澤死刑囚が絵を描いているのをご覧になったとのエピソードをHPで紹介しておられますが、宮城刑務所のこの梅もご覧になっていたのかもしれません。

 元高検検事長まで歴任された弁護士の方が、HPで「裁判員読本」「冤罪防止対策の研究」を公表しておられます。HPを開かれたのは小嶌信勝先生です。小嶌先生は関西大学の夜学を出られた後、苦学されて司法試験に合格された後、検察一筋に生きてこられて「見通しの小嶌」と評された方だそうですが、最高検時代に死刑再審事件の検討をされた事を契機に、冤罪事件が起こる原因について研究を続けてこられ、「冤罪だけは許せない」という思いからこのようなサイトを立ち上げられたそうです。
 自白の検討の仕方(「秘密の暴露」があるとはどういうことか)や、証拠開示の問題点(現行法の証拠開示についての刑訴法のルールは不十分ではないかと論評されておられます)など、元検察官でおられながら忌憚なく捜査や刑事裁判のあり方について批判を加えてもおられます。皆さんにもご一読をお薦めします。小嶌先生のお許しを戴いたので以下にリンクを張ります。

弁護士 小嶌信勝の冤罪防止に関するホームページ
http://www.ne.jp/asahi/kojima/law/

小嶌先生はメールでの質問も受け付けておられます。私の拙い質問にも丁寧に御回答いただいて下さいました。この場をお借りして感謝させていただきます。
 
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2007年09月26日

取調べ録画「部分的録画」で早くも争いが

torisirabesitu.jpg写真は供述心理学者である浜田教授の著書である「取調室の心理学」です。浜田教授は取調べを受ける者の捜査官に対する「依存」「信頼」が生じることなど、日本の捜査過程における取調べの様々な問題点について心理学者の立場から問題提起しておられます。

 以前から検察庁が検察段階での取り調べについてだけ、部分的に録画を試行していることについて触れてきたが、先日のニュースでは早速部分的録画について問題となったケースがあったようです。東京地裁のケースのようです。部分的録画が都合良く「切り貼り」されるおそれがあることは言うまでもありませんが、警察段階での取り調べの録音・録画や「任意同行」について、同行の過程についての録画を行うといったことについては全く検討されていないようです。
 裁判員裁判が「被害者参加」などと相俟って、「劇場」とされることが懸念されます。

以下はニュース(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070925-00000060-san-soci)からの引用です。
裁判員制度、取り調べ録画DVD 弁護側反発「都合よく撮影」
9月25日8時1分配信 産経新聞


 ■検察側自賛「具体的に立証」

 平成21年5月までに始まる裁判員制度をにらんで、被告の供述調書の信用性を高めるために検察が試行した「取り調べの可視化」が、早くも争点化している。東京地裁では被告が取り調べで自白した状況を録画したDVDが証拠採用され結審したが、弁護側は「都合のいいところだけ撮った」などと猛反発している。密室で行われる取り調べの様子を映像で証拠化するのは日本の司法制度における大きな前進だが、実際に行ってみるとまだ課題も多いようだ。(大泉晋之助)

 東京地裁でDVDを証拠採用した公判で結審第1号になったのは、フィリピンで保険金目的で元同僚を殺害したとして、殺人などの罪に問われた山本俊孝被告(56)。

 検察官「自白して後悔はないか」

 山本被告「全然ありません。かえって心がさっぱりした」

 公判廷のスクリプターでは、取調室で山本被告が検事の前で自白している様子で上映された。

 山本被告は公判では犯行を全面否認しているが、検察側は19日の論告で「DVDの中の被告人の供述態度と、公判廷での態度を比べれば、どちらが真実を語っているのかは一目瞭然(りょうぜん)」と述べ、映像の力を強調した。

                  ◆◇◆

 刑事裁判では、捜査段階で自白し、供述調書にサインした被告が、公判では一転「自白は強要されたものだ」と主張し、調書の任意性が争われることも多い。これまでは法廷で取調官を証人尋問するなどして取り調べてきたが、これでは裁判の長期化にもつながる。こうした問題を解決する手段として期待されているのが、取り調べ状況を録画したDVDだ。

 取り調べ状況の録画は昨年7月から、東京地検のほか、大阪や名古屋などの各地検で試行が始まっている。証拠として提出されたのは、東京地裁で3件ある。

 DVDの映像なら、取り調べの様子を客観的に証明できる。検察側は、刑事裁判になじみの薄い裁判員に、“映像の力”で適正な取り調べだったことを分かりやすく伝えることを目指している。


 検察幹部は「どういった経過で自白に至ったかを具体的に見せられることは、調書に出てこない点を明らかにできる場合がある」とDVDの利点を話す。

                  ◆◇◆

 その一方で、DVDの証拠提出には疑問の声もある。日本弁護士連合会は「警察段階から取り調べのすべてを録音・録画しなければ意味がない」と、検察官の取り調べの一部だけしか録画していない現在のやり方を批判している。

 また、逆に「取り調べの様子をすべて録画すると、容疑者が意識して真実がわかりにくくなるのを懸念する」(鳩山邦夫法相)との意見もある。

 山本被告の弁護人はDVDについて、「最初に自白した日から1カ月以上たってから録画された。DVDで山本被告が話していることは、録画以前に完成した自白の総ざらい的なことで、検察官の念押しに相づちを打っているに過ぎない」と、証拠能力を否定している。

 裁判員が法廷でDVDを見たら、どう感じるのか−。

 あるベテラン裁判官は「自白を録画した映像はかなりの説得力を持っている」と指摘。その上で、「いくら『映像だけを有罪・無罪の判断基準にしないでください』と裁判官が説明しても、裁判員が冷静な判断をできるのか」と、現在のまま裁判員制度に組み入れることを疑問視する。

 元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長(刑事訴訟法)は、現在の試行状況について「録画していない場面で不当な取り調べがあったのではと疑われるのも仕方がない」と指摘する。「徹底するのであれば、警察の取り調べから録画・録音すべきだが、捜査にどんな影響が出るか分からない。日本の司法に合うのか、しばらくは試行錯誤が続くだろう」と話している。


なお、イギリスにおける警察段階での取調べの録音などについて、甲南大学のサイトに詳細がありました。リンクはこちらをクリックしてください。

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2007年09月16日

虞犯少年に対する警察調査権を規定する規則改正か

keishityo03.jpg写真は警視庁です。本来少年法では少年事件は家庭裁判所が主体となって調査・審判を行う全件送致主義を採っていますが、今年春の第二次改正少年法では触法少年に対する警察調査権が規定されました。この時は虞犯少年に対する警察調査権の立法については見送られたのですが、今回は「任意調査」という形で少年警察活動規則が改正されるようです。


 虞犯の場合には虞犯の構成要件があいまいであることから「任意調査」の名目で濫用の危険が高く、またこのような警察調査権を規則レベルで制定することの合理性は疑わしいと考えます。もし百歩ゆずってこのような調査権について規則で規定するのであれば、「任意調査」が事実上の強制に及ばないように、「調査(刑事事件では任意同行や取り調べに相当する)」の録音・録画などの記録化や、保護者や弁護人などの成人の「任意調査」への立会い権なども不可欠であると考えます。ある警察関係者の方の個人的な見解を今春の第二次少年法改正時にお聞きしたのですが、「虞犯事件で調査の必要性が高いのは、暴力団などが少年の背後に存在するケース」「法案で予定されていた虞犯に対する調査権が削除されたが、これは触法事件ほど必要性は高くなかったのではないか」と仰っておられたのを回想しました。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=STXKE0220%2006092007&g=K1&d=20070906より引用
罪を犯す恐れのある少年、警察に任意調査権・規則改正案公表

 警察庁は6日、将来罪を犯す恐れがある「虞犯少年」に対する警察の任意調査権を明記した少年警察活動規則の改正案を公表した。7日から来月6日まで一般からの意見を求め、最終的な改正案をまとめる方針。

 虞犯少年への任意調査権は、5月に成立した改正少年法の政府案に盛り込まれながら、日弁連や野党が「すべての子どもが警察の監視下に置かれる」などと反対したため削除された経緯がある。日弁連は規則改正に「国会軽視」と反発しており、臨時国会での議論を求める声も出ている。

 警察庁は「国会での議論は承知しているが、警察法に基づく虞犯少年の調査の必要性は審議過程で確認されている」と説明。これまでも調査した虞犯少年を家裁送致するなどしており、「以前から通達などで捜査現場に徹底していた。調査のあり方は今後も変わらない」としている。〔共同〕 (17:32)

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2007年08月25日

最3小判平成19年7月10日について

今年の7月10日に最高裁第三小法廷で高裁の刑事公判において、特例判事補が最高裁から職務代行の発令がなされていないまま高裁裁判官として裁判を行ったとして、札幌高裁の原判決を破棄差戻しにした判例が出ています。
この判例で問題なのは、本件では最高裁は口頭弁論を開かずに破棄判決をしていることで、これについて本判決は「上記のような原判決を破棄すべき事由の性質,本件被告事件の内容,審理
経過等にかんがみると,本件について,上告裁判所が原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻す旨の判決をするに当たり,刑訴法408条の趣旨に照らし,必ずしも口頭弁論を経ることを要しないというべきである。」としているのですが、問題はないのでしょうか。
あくまでも刑訴法408条は上告を棄却する場合に書面審理で上告理由がないことが明白な場合について弁論を開かない上告棄却判決を許容した条文です。

以下に本判決を転載します。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070710152825.pdfより引用

法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄差戻し
判例集巻・号・頁

原審裁判所名 札幌高等裁判所
原審事件番号 平成18(う)353
原審裁判年月日 平成19年02月27日

判示事項
裁判要旨 1 控訴審判決の宣告手続に,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない地方裁判所判事補が関与した違法があるとして,原判決が破棄され,原裁判所に差し戻された事例
2 上告裁判所が原判決を破棄する場合において,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例

主文
原判決を破棄する。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理由
 札幌高等検察庁検事長中尾巧の上告受理申立て理由は,要するに,原判決の宣告手続には,法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があり,これは,判決に影響を及ぼすべき法令の違反で,原判決を破棄しなければ著しく正義に反する,というのである。
 そこで検討すると,記録によれば,原審第2回公判期日において原判決を宣告した原審裁判所の構成には,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から札幌高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない札幌地方裁判所判事補が加わっていたことが認められる。
 したがって,原判決の宣告手続には,裁判所法18条等の法律に従って判決裁判所を構成し
なかった違法があることが明らかであり,これは判決に影響を及ぼすべき法令の違反であって,かつ,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから,刑訴法411条1号,413条本文により,原判決を破棄し,本件を原裁判所に差し戻すのが相当である。
 なお,上記のような原判決を破棄すべき事由の性質,本件被告事件の内容,審理経過等にかんがみると,本件について,上告裁判所が原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻す旨の判決をするに当たり,刑訴法408条の趣旨に照らし,必ずしも口頭弁論を経ることを要しないというべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長 裁判官 堀籠幸男 裁判官 藤田宙靖 裁判官 那須弘平 
裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)

(以下は転載者引用参照条文)
第四百六条  最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。

第四百八条  上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。



なお、民事事件ですが、同じ最高裁第三小法廷で高裁判決を高裁で口頭弁論に関与していない裁判官が判決書に署名押印していることを理由に原判決を破棄した判例が出ています。以下のサイトをご覧下さい(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34001&hanreiKbn=01)より転載。

事件番号 平成18(オ)1598
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成19年01月16日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄差戻し
判例集巻・号・頁

原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成17(ネ)5913
原審裁判年月日 平成18年07月18日

判示事項
裁判要旨 上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄する場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない

 主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
 理由
 職権をもって調査すると,記録によれば,原判決には,その基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることが明らかである。
 そうすると,原判決は,民訴法249条1項に違反し,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官によってされたものであり,同法312条2項1号に規定する事由が存在する。したがって,上告理由について判断をするまでもなく,原判決を破棄し,本件を原審に差し戻すのが相当である。
 なお,民訴法319条及び140条(同法313条及び297条により上告審に準用)の規定の趣旨に照らせば,上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄し,事件を原審に差し戻す旨の判決をする場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しないと解するのが相当である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長 裁判官 藤田宙靖 裁判官 上田豊三 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫)
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2007年08月17日

裁判員裁判ー検察、都合が悪い調書は証拠申請せず?

saikou05.jpg写真は日本の最高裁です。
かつて松川事件で、最高裁は被告人らのアリバイを証明することになった「諏訪メモ」の提出命令を発したことがあります。同メモは検察が公判に提出することなく隠匿していたのですが、国会でも問題になり、検察はメモ作成者の諏訪氏に返却していたのでした。裁判員制度が導入された後に「都合の悪い調書は出さない」あるいは「被疑者や参考人の供述が変遷している間は調書を取らない」というような運用になれば、裁判員は「選択の余地がないところで有罪の選択をさせられ、『市民が関与した判決』ということで責任だけ押しつけられる」ということになりかねないのではないでしょうか


以下はhttp://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2007081501000943.htmlより引用
自白調書、不提出の選択も 裁判員対策で最高検試案
2007年8月16日(木)07:28

 市民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度に備え、最高検は15日までに、捜査・公判対策の「試案新版」を作り、「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針を打ち出した。提出自体の回避は従来方針の転換となる可能性もあり、捜査や公判の実務に影響を与えそう。


 すでに公判前整理手続は施行され、裁判所が証拠開示についての裁定を行えるようになりましたが(従前は訴訟指揮権を基軸とした個別開示のみ)、それに伴って捜査機関が否認の調書や供述内容が揺れている時期での調書を取らないという問題も生じているようです。
 このような「都合の悪い調書は出さない」というような運用が行われた場合に、そのような調書の開示をどれだけ弁護側が求めていけるのかが問題となると思います。被告人調書については被疑者段階から「被疑者ノート」を差し入れて、取り調べによって何時どのような調書が取られたのかを被疑者に記録させることによってある程度対応できるかもしれませんが、参考人などの調書についてはそのような調書が取られたのかさえも被告人側には明らかでない事もあるでしょう。
 証拠開示に検察官が応じない場合には公訴そのものを棄却する位の制裁が必要かもしれません。
 裁判員制度が導入された後、全て「有罪方向」にお膳立てされた証拠を前にして裁判員が「判断」を迫られるというような事態にだけはならない事を祈ります。
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2007年07月20日

最1小判平成19年04月23日について

最高裁第一小法廷でいわゆる交通違反の速度測定システムの正確性にが立証されていないとして原審(仙台高裁秋田支部)が公訴棄却とした判決に対する上告審において、原審を破棄差し戻しにした判例が出されています。
最高裁サイト(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34551&hanreiKbn=01)によると、「高速走行抑止システムによる速度測定結果の正確性について,何ら証拠調べを行わず検察官に釈明を求めたり追加立証を促すなどすることもなく,プラス誤差が生じないことの証明が十分でないとした原判決を,審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあるとして破棄差し戻した事例」とされています。
 以下に全文を転載します。私は、裁判所が検察官に対して釈明義務違反・追加立証を促さないことを違法とすることは現行刑訴法の当事者主義と相容れないと考えます。この点について、本判決はあくまでも控訴審が証拠調べを一切行わずに差戻しもせずに記録だけで判決をした点に違法があるということに問題があるのであって、一般的に裁判所が検察官に対する釈明義務があるとしたものではないと考えます。
 なお、本判決は疑問解消・刑事訴訟法(日本評論社サイトを参照)で担当の教授が取り上げて解説を加えてくださるそうで、今から楽しみにしています。上訴の箇所で触れてくださるそうです。


道路交通法違反被告事件
最高裁判所第一小法廷平成18年(あ)第726号
平成19年4月23日判決


       主   文

原判決を破棄する。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。


       理   由

 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するもので本件に適切でないか,実質において事実誤認の主張であり,その余は,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論にかんがみ職権で判断すると,原判決は以下の理由により,破棄を免れない。
1 第1審判決が認定した本件の罪となるべき事実の要旨は,次のとおりである。
 被告人は,平成16年8月16日午後3時2分ころ,秋田県内の道路で,法定最高速度である60km毎時を32km超える92km毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行した。
2 記録によれば,原判決に至る経過は次のとおりである。
 被告人は,犯行場所の道路に設置された三菱電機株式会社製の高速走行抑止システム(三菱RS−2000B型。以下「本件装置」という。)により,時速92kmで普通乗用自動車を運転して進行したと計測,撮影されたものであるが,第1審公判において,その速度測定結果の正確性を争った。
 第1審判決は,本件装置の機能等との立証趣旨で取り調べたその取扱説明書や本件装置の保守,点検等に当たっている会社員の証言等により,本件装置は指定された速度を超えて走行する車両のみを撮影するもので,実際の速度より高い測定値を示すプラス誤差は出ない構造になっており,理論的にも実際の使用上でも,正常に作動している限り,その正確性に何らの問題もないことが認められるとした上で,本件前後の定期点検や自動自己点検の際に異常がなかったことなどから本件当時も正常に作動していたと認められるとし,そのほか,本件前後に本件装置により速度違反として撮影された車両の運転者6名がいずれも違反事実を認め,その略式命令が確定していることなどを指摘し,上記犯罪事実を認定して被告人を罰金6万円に処した。
 被告人が事実誤認を理由に控訴し,本件装置の信用性,測定値の正確性等を裏付ける証拠がないから,これらについて事実調べをする必要があると主張して,本件装置の現場検証等の証拠調べを請求した。しかし,原審裁判所は,第1審の証拠関係により有罪かどうかの判断をするのが可能かつ相当と考えるとして,これらをすべて却下して直ちに結審し,その際,検察官に対して釈明を求めたり追加立証を促すようなことは全くしなかった。
3 原判決は,第1審判決を破棄し,本件公訴を棄却する旨の判決を言い渡したが,その理由の要旨は,次のとおりである。
 本件装置による測定値の正確度について,本件装置の取扱説明書等には「(0%〜−6%)−1km/h以内」などと記載されているところ,これらの記載はマイナス誤差しかないことを前提としているが,誤差というのは通常マイナス誤差もプラス誤差もあると考えるべきであり,マイナス誤差しかないことにつき確たる根拠のあることが証明される場合を除けば,たやすくマイナス誤差しかないという前提に立つことはできない。第1審公判の証人は,測定値にプラス誤差は生じない旨供述するが,その根拠については三菱電機からの説明資料で確認したとするにとどまり,その裏付けとなる資料は証拠として提出されていない。本件においては,測定値にマイナス誤差しかないことを裏付けるに足りる客観的データ等の証拠は何ら存在しない。したがって,本件の証拠状況の下においては,本件装置による被告人車両の測定値が92km毎時であったというだけでは,なお実際には90km毎時未満の速度で走行していたのではないかとの合理的な疑いが残る。そのほか,第1審判決が挙げる事情によっても,本件装置の測定値の正確性を認めるに足りない。
4 しかしながら,原判決の上記判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
 記録に照らすと,本件では,第1審公判で取り調べられた本件装置の取扱説明書や証人の供述等の証拠により,本件装置による速度測定の正確度につきプラス誤差は生じないことが一応立証されており,被告人側から,これに疑いを入れるような特段の具体的主張,立証は全く示されていない。それにもかかわらず,原判決は,上記のとおり,取扱説明書の記載や証人の供述を根拠付ける客観的資料がないとして,プラス誤差が生じないことについての証明が十分でないと判断したものである。しかし,第1審公判における検察官の立証の程度は上記のとおりであるから、このような場合,原審裁判所において,検察官の立証がなお不十分であると考えるなら,検察官に対して,プラス誤差が生じないことを客観的に裏付ける資料を追加して証拠調べを請求するかどうかにつき釈明を求め,必要に応じその請求を促すなどして,更に審理を尽くした上で判決すべきであった。殊に本件においては,第1審公判で証人がプラス誤差が出ないことを説明資料で確認したと供述している事情があり,原判決もそのことを指摘しているのであるから,少なくともその資料について追加立証を促すことは容易に行い得たはずである。
 しかるに,原判決は,検察官に追加立証を促すなどすることなく直ちに判決を言い渡して第1審判決を破棄した上,上記客観的資料の存否,内容等について更に審理を尽くさせるため事件を差し戻すこともせずに,犯罪事実が認められないことを前提として公訴棄却の自判をしたものである。原判決がこのような措置に出た理由として挙げるところは,いずれもその判断を是認する根拠とはなり得ない。 
5 そうすると,原判決は,審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあり,破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号,3号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,上記指摘の点などについて更に審理を尽くさせるため,本件を仙台高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官水野美鈴 公判出席
(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉徳治 裁判官 才口千晴)
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2007年07月16日

裁判員法67条の解釈

houmusyou002.jpg写真は法務省の旧庁舎です。いわゆる赤煉瓦といえば、法務省の代名詞ですが、建設にあたって外国に対して国威を示す意図があったようです。その赤煉瓦が、裁判員法67条の公式解釈(?)を示しています。

問題となった条文は以下の通りです。

(抜粋:裁判員法)
第四章 評議
 (評議)
第六十六条 第二条第一項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。

2 裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。

3 裁判長は、必要と認めるときは、第一項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。

4 裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

5 裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。

 (評決)

第六十七条 前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

2 刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。


この裁判員法67条の解釈について、法務省サイト(http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/info/room/01.html)に以下の記事が載っていました。
○ 裁判員裁判における有罪・無罪の評決について
最近,報道されたところによりますと,「裁判員裁判の評決において,裁判官3名と裁判員1名が被告人は有罪であるとの意見であり,裁判員5名が被告人は無罪であるとの意見である場合,裁判員法67条1項の規定(「・・・評議における裁判員の関与する判断は,・・・構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。」)のため,被告人は無罪であるという判断をすることができない。」という誤解をしている方がいらっしゃるようです。
しかしながら,上に挙げられた例の場合には,被告人は無罪とされることになります。
一般に,刑事裁判においては,犯罪の証明があったと認められる場合に有罪とされ,その証明があったとは言えない場合に無罪とされますので,判断の対象となるのは,犯罪の証明があったかどうかということになります。したがって,この場面において,裁判員法67条1項の規定により,構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によらなければならないとされるのは,この犯罪の証明があったという判断についてなのです。
そして,上の例の場合,裁判官3名と裁判員1名が,犯罪の証明があり,被告人は有罪であるという意見ですが,この意見は,裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の過半数の意見ではないのですから,犯罪の証明があったとは認められないことになります。したがって,被告人は無罪とされることになるのです。


これについて、以下のニュース報道がなされています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007071502032623.html
『無罪』過半数でも全裁判官『有罪』なら? 『双方の意見必要』 条文解釈で混乱 
2007年7月15日 朝刊

 裁判員法67条(評決)評議における裁判員の関与する判断は、(中略)構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

 二〇〇九年から始まる裁判員制度で、被告が有罪かどうかを決める「評決」を規定した裁判員法六七条について、法曹界の一部から「条文の記述が不十分で、本来の意図と違った解釈ができる」という指摘が出ている。法務省は「明らかな誤解。誤った解釈が広がるのは困る」として、ホームページに新たに解説文を載せ、“火消し”に乗り出した。

 殺人などの重大事件を対象とする裁判員裁判は、プロの裁判官三人と一般から選ばれた六人の裁判員によって審理が進められる。最後に多数決で評決が行われるが、弁護士たちが問題にしているのは「評議の判断は、裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数の意見による」という条文だ。

 条文の趣旨は、有罪の評決をする場合は「有罪意見が過半数で、その中には裁判官と裁判員の双方が含まれることが必要」ということ。仮に一般の裁判員六人全員が有罪を主張しても、裁判官が一人も含まれないときは有罪は成立せず、無罪となる。

 だが、裁判員制度に反対する高山俊吉弁護士らは、その逆のケースを示して別の解釈をする。

 「仮に裁判員六人が無罪で、裁判官三人が有罪の場合、条文をそのまま読むと、無罪が過半数でも裁判官の意見が含まれないので、無罪にも有罪にもならずに評議は成立しない。だれかが意見を変えるまで評議を続けることになる」

 法務省の担当者はこの解釈を真っ向から否定した上で、「当然、無罪になる」と説明する。

 「六七条にある『評議の判断』とは、有罪か無罪かではなく、『検察官が有罪を証明できたかどうか』。裁判官三人が有罪意見でも過半数ではないのだから、犯罪の証明がないとして無罪となる」

 法務省の主張は、裁判員法は刑事訴訟法の特別法であり、刑訴法にある「犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言い渡しをしなければならない」という規定は当然、裁判員裁判にも適用され、そのことを裁判員法にわざわざ明記する必要はないという理屈だ。

 同省は十日付で、高山弁護士らが示した評決例をホームページで取り上げ、「双方の意見を含む過半数に達していないため、犯罪の証明があったとは認められず、無罪となります」との解説を掲載した。

 だが、反対派の同弁護士だけでなく、元裁判官の学者や裁判員制度に賛成する弁護士の中にも「六七条は意味が通りにくく不親切だ。評決不能という解釈の余地もある。裁判員が誤解しないように明文化すべきだ」という指摘が出ている。


かなり問題のある条文だと思います。単純に解釈すれば、評決不成立と読むことができるので、もし法務省の公式見解のような立場ならば、
「被告人の罪責を肯定する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。もし評議の結果被告人の罪責を肯定する意見が構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見に達しない場合には、被告人の罪責を否定したものとする」というように改正するべきではないでしょうか。
 なお、法務省見解はあくまで裁判所の法解釈を左右するものではないことを念のため付言しておきます。

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2007年06月26日

「マル特無期刑」について

senat.jpgフランスの元老院(Senat)です。各県代表の議員より構成されています。かのヴィクトル・ユーゴーも元老院議員でした。
 近年、フランスでは刑事法関係の改正がヨーロッパ人権条約との関係もあって行われているようですが、元老院が刑事関係の立法で果たしている役割は大きいようです。

かつて、私が中山研一教授のブログ「中山研一の刑法学ブログ」のコメント欄に書き込んだコメントを元検察官の弁護士の方が引用してくださっておられました。それを以下に引用します。
近年、「マル特無期刑」なる言葉を聞く機会がありました。無期懲役の仮釈放の(検察官が行なう)上申について、死刑求刑で無期判決が出たような一定の案件については、原則的に仮釈放の上申はしないという扱いだそうですが、法的には仮釈放の決定権限は更正保護委員会ですよね。法務・検察からの上申がなければ、事実上更正保護委員会が仮釈放を決定することは運用上できないのでしょうか?だとすれば法務・検察サイドで法改正によらない「終身刑」が事実上作られていることになり、問題があると思うのですが、いかがでしょうか?


これについて、落合洋司弁護士(東京弁護士会)がご本人のブログ「日々是好日」で引用され、以下のようにコメントをつけてくださってておられました。
この点について、私の記憶、守秘義務の限界の範囲内で、少し触れると、確かに、平成10年ころから、こういった制度が新たに生まれた事実はある。再犯の恐れが強く、安易に仮釈放を認めるべきではない被告人について、特に指定する、といった制度であった(要件はもう少し具体的であったと思う)。
ただ、上記のように、「法務・検察からの上申がなければ、事実上更正保護委員会が仮釈放を決定することは運用上できない」というよりも、仮釈放にするかどうかを決定する際、捜査を担当した検察庁の意見を聞く、といった制度であったと思う。その前提として、「マル特」に指定されている事件である必要があり、そういった事件に指定するかどうかは、無期懲役刑が確定した時点で決めていたと記憶している。実際、私が主任検事となって起訴した事件で、無期懲役刑が確定した事件があり、主任検事として意見を書くように言われて、書いた記憶がある。
そういった事件に指定されると、検察庁の意見に拘束されるというよりも、検察庁に意見を聞いて、参考にするという制度になっていたはずである。
その後、そういった制度が変容したかどうかは、何とも言えない。
私が記憶している制度のままなら、「法改正によらない「終身刑」が事実上作られている」とまでは言えないと思うが、運用によっては、そういった制度になる可能性は否定できない。


 どうも、「マル特無期刑」に指定されたからといって仮釈放が絶対的に不可能というわけではないようですが、法務・検察の運用によって事実上の仮釈放なしの終身刑ができつつあると評価することもできそうですね。
 フランスでは行刑判事と控訴院行刑部という行刑裁判所があり、仮釈放や処遇などについて司法的統制をかけているようです。無期刑の仮釈放については、2000年6月法律によって司法による決定の対象になってから仮釈放率が上がっているというニュースに接しました。それは又別の機会に触れます。
 日本でも仮釈放などの行刑における処遇について裁判所によるコントロールをかける方向を模索するべきではないかというのが私の見解です。フランスは重罪事件について陪審制度を採用しているため、刑のばらつきや検事の求刑を上回る刑の宣告などがあるようですが、仮釈放段階でこのように行刑裁判が行うことによって調整しているようです。日本でも裁判員制度が導入されようとしていますが、刑のばらつきなどの問題は同様に起こると思いますので、このような制度の導入も検討されるべきと考えます。

 追記:ブログでコメントをしてくださった落合弁護士に感謝します。

 

posted by 一法律学徒 at 00:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 刑事法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月30日

損害賠償命令(附帯私訴)について

 前回の記事で、現在衆議院に議案が提出されている被害者参加について取り上げたが、この法案のもう一つの大きなテーマである損害賠償命令について今日は取り上げる。なお、被害者参加・損害賠償命令などのいわゆる「被害者権利保護立法」については、刑事手続の根幹にかかわる大きな問題を含んでいると考えるので、今後も動向を追っていくつもりである。

 損害賠償命令については、マスコミ報道等では「附帯(付帯)私訴」と表記されているが、日本の旧刑事訴訟法やドイツなどで認められている「付帯私訴」は、刑事公判において犯罪被害を受けたと主張する者が民事上の請求権行使のために刑事公判において損害賠償請求権に関する主張・立証を行う当事者として登場するというシステムである。
 「損害賠償命令」については、あくまでも刑事公判で有罪判決が出された後に有罪判決をした刑事裁判所が簡易な手続によって損害賠償請求についての審理(原則として非公開の審尋)を行って、賠償命令を出すというシステムなので、これを「付帯私訴」というのは不適切と思われる。
 とりあえず、今のところ私が問題となりうると考える点について指摘させていただく。

・犯罪被害者が2千円の手数料で損害賠償請求をできるというシ ステムを評価する向きもあるようだが、これについては「民事 訴訟費用等に関する法律」を改正して、通常の民事訴訟で犯罪 被害者が不法行為に基づく損害賠償請求を行う場合の手数料額 の特例を作ることで対応できるのではないか(私見では、濫訴 に対する予防措置さえできていれば、手数料を無料にしても問 題はないと考える)。

・刑事公判を担当した刑事裁判官が損害賠償命令を出すことにな っているが、これについて通常の民事訴訟で賠償が認められる 場合よりも賠償額が不当に過大になることはないであろうか? また、交通事件などで被害者側にも過失があるような場合に  は、刑事裁判官が過失相殺などの調整を行うのには慣れていな いのではないか(交通事件については、通常大都市では交通事 件の民事部があり、専属の裁判官が審判を行っている)

・犯罪被害者の方の中には、特に刑事被告人が刑事公判で事実を 争っているような場合、刑事判決が確定した後に損害賠償請求 を行うことを考えておられる方も少なくないであろう。そのよ うな方が刑事判決確定後に賠償命令制度を利用できるようなシ ステムにはなっていない。
 
・何よりも、賠償命令・民事の損害賠償についての判決が出て 
 も、行為者に資力がなければ判決は画に描いた餅である。損害 賠償については行為者に資力がない場合には、国が支払って、 後から国が行為者に対して求償できるようなシステムが必要で あろう。

以下、法案中「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の部分中損害賠償命令に関する部分を引用する。
(損害賠償命令事件に関する手続の手数料等)

 第二十八条 損害賠償命令の申立てをするには、二千円の手数料を納めなければならない。

 2 民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一七の項の規定は、第十九条第一項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。

 3 損害賠償命令の申立てをした者は、第二十条第一項(第二十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、第三条第一項及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。

 4 前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。

  第七条中「第四条」を「第五条」に改め、同条を第八条とし、同条の次に次の一章及び章名を加える。

    第五章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例

     第一節 損害賠償命令の申立て等

  (損害賠償命令の申立て)

 第九条 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。

  一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪

  二 次に掲げる罪又はその未遂罪

   イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条から第百七十八条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪

   ロ 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪

   ハ 刑法第二百二十四条から第二百二十七条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪

   ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)

 2 損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。

  一 当事者及び法定代理人

  二 請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実

 3 前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。

  (申立書の送達)

 第十条 裁判所は、前条第二項の書面の提出を受けたときは、第十三条第一項第一号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。

  (管轄に関する決定の効力)

 第十一条 刑事被告事件について刑事訴訟法第七条、第八条、第十一条第二項若しくは第十九条第一項の決定又は同法第十七条若しくは第十八条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理及び裁判を行う。

  (終局裁判の告知があるまでの取扱い)

 第十二条 損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄及び認諾並びに和解(第五条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く。)のための手続を含む。)及び裁判(次条第一項第一号又は第二号の規定によるものを除く。)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。

 2 裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。

  (申立ての却下)

 第十三条 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。

  一 損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回又は変更されたため、当該被告事件が第九条第一項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く。)。

  二 刑事訴訟法第四条、第五条又は第十条第二項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。

  三 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条若しくは第三百三十六条から第三百三十八条までの判決若しくは同法第三百三十九条の決定又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の決定があったとき。

  四 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当しないとき。

 2 前項第一号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 3 前項の規定による場合のほか、第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

  (時効の中断)

 第十四条 損害賠償命令の申立ては、前条第一項の決定(同項第一号に該当することを理由とするものを除く。)の告知を受けたときは、当該告知を受けた時から六月以内に、その申立てに係る請求について、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

     第二節 審理及び裁判等

  (任意的口頭弁論)

 第十五条 損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 2 前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。

  (審理)

 第十六条 刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。

 2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。

 3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。

 4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。

  (審理の終結)

 第十七条 裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。

  (損害賠償命令)

 第十八条 損害賠償命令の申立てについての裁判(第十三条第一項の決定を除く。以下この条から第二十条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。

  一 主文

  二 請求の趣旨及び当事者の主張の要旨

  三 理由の要旨

  四 審理の終結の日

  五 当事者及び法定代理人

  六 裁判所

 2 損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。

 3 第一項の決定書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。

 4 裁判所は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。

 5 裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第一項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。

     第三節 異議等

  (異議の申立て等)

 第十九条 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。

 2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。

 3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。

 5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。

 6 民事訴訟法第三百五十八条及び第三百六十条の規定は、第一項の異議について準用する。

  (訴え提起の擬制等)

 第二十条 損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第九条第二項の書面を訴状と、第十条の規定による送達を訴状の送達とみなす。

 2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

 3 第一項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。

 4 前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

  (記録の送付等)

 第二十一条 前条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第十六条第四項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。

 2 裁判所書記官は、前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く。)を送付しなければならない。

  (異議後の民事訴訟手続における書証の申出の特例)

 第二十二条 第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第二項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第二百十九条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。

  (異議後の判決)

 第二十三条 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。

 2 前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。

 3 民事訴訟法第三百六十三条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。この場合において、同法第三百六十三条第一項中「異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、「損害賠償命令」と読み替えるものとする。

     第四節 民事訴訟手続への移行

 第二十四条 裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第十六条第三項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。

 2 次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。

  一 刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。

  二 損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。

 3 前二項の決定及び第一項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 4 第二十条から第二十二条までの規定は、第一項又は第二項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。

     第五節 補則

  (損害賠償命令事件の記録の閲覧等)

 第二十五条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

 2 前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

 3 前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。

 4 裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。

 5 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれの有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。

 6 損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、当該記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。

 7 第四項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 8 第五項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。

  (民事訴訟法の準用)

 第二十六条 特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条、第十四条、第一編第二章第二節、第三章(第四十七条から第五十一条までを除く。)、第四章、第五章(第八十七条、第九十一条、第二節第二款、第百十六条及び第百十八条を除く。)、第六章及び第七章、第二編第一章(第百三十三条、第百三十四条、第百三十七条第二項及び第三項、第百三十八条第一項、第百三十九条、第百四十条、第百四十五条並びに第百四十六条を除く。)、第三章(第百五十六条の二、第百五十七条の二、第百五十八条、第百五十九条第三項、第百六十一条第三項及び第三節を除く。)、第四章(第二百三十五条第一項ただし書及び第二百三十六条を除く。)、第五章(第二百四十九条から第二百五十五条まで並びに第二百五十九条第一項及び第二項を除く。)及び第六章(第二百六十二条第二項、第二百六十三条及び第二百六十六条第二項を除く。)、第三編第三章、第四編並びに第八編(第四百三条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までを除く。)の規定を準用する。
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2007年04月29日

「犯罪被害者と司法を考えるシンポジウム」

m@@eX?.jpg写真は大阪弁護士会館内部の法律相談案内板。この建物の中でシンポジウムが行われた。案内板には法テラスの案内も書かれているが、犯罪被害者支援の国選弁護士制度も法テラスなどによって充実することが望まれるのではないだろうか(もっとも、その支援の内容が問題となることは以下に記した通り)。

 現在、衆議院に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が上程されている。
 しかしその中で刑事司法制度の根幹にかかわる改正として、被害者の訴訟参加制度が盛り込まれている(他に、損害賠償命令、民事訴訟におけるビデオリンク措置、犯罪被害者の事件記録の閲覧・謄写の範囲の拡大なども盛り込まれているが、ここでは割愛する)。

 この「被害者の訴訟参加」とは、故意の犯罪行為によって死傷に至らしめた罪・強制わいせつ・強姦・人身売買などの一定の重罪事件について、被害者や遺族(あるいはこれらの者の代理人弁護士)が法定で検察官とともに当事者として訴訟に参加し、被告人質問や情状立証に関する証人尋問・求刑に相当する意見を陳述することができるというものである。

 この訴訟参加制度に関しては、刑事司法の根幹にかかわる問題が多く含まれているが、被害者団体からも批判の声が挙がっており、先週犯罪被害者や学者などから構成されている「被害者と司法を考える会」より、国会に対して廃案とするようにとする要望書が提出されている。

 昨日、大阪弁護士会で開かれた「犯罪被害者と司法を考えるシンポジウム」に参加したが、この制度に対して4人のパネリスト(「被害者と司法を考える会」代表・法科大学院刑訴法担当教授、被害者支援にたずさわる心理学者・刑事弁護の経験の深い弁護士)から以下のような意見が述べられていた(以下は私の要約)。

・一部の被害者しか使えない制度である。被告人と対峙する当事者となることによって二次被害をうけることになりかねない。事件記録に対する被害者の情報アクセスが現状では十分に行えていない状況である。法廷が復讐の場になりかねない。綿密な証拠の積み重ねで判断することに慣れていない裁判員の事実認定に影響を与えかねない。

・私訴制度を設けているフランスでは、被害者が私訴原告人として刑事裁判の当事者となることができるが、私訴原告人はあくまでも損害賠償請求を訴求するという建前である。被害者が当事者として刑罰を要求するという制度は、私的復讐を禁じている近代刑事裁判の枠組とは合致しない。被害者が法廷で行われることを知りたいのは当然であるが、当事者として関与するというのは別問題である。

・被害者に対する継続的な支援が必要。被害者参加については、参加したくない人もいる。参加の方法・度合いについて様々なオプションを設けないと関われない人を切り捨ててしまうような制度になりかねないのではないか。

・正当防衛の成否・責任能力の有無、被害者の重大な過失などが問題になるケースでは、被害者が敵対的な形で当事者として出てくると、従来の形とはことなった弁護方針とならざるをえない。 争うべき争点を絞った上で書証を不同意にして争うべきところを、全て不同意にして全面的に争うか、あるいはただただ許しを乞うだけになりかねない。被告人が被害者参加人の前では言いたいことが言えなくなりかねない。
 
 私は、このような制度がもし実現することになれば、事実認定と量刑手続とが分けられていない現在の刑訴法のもとでは、事実上被害者参加人の訴訟活動が事実認定に大きく影響することになりかねないと考える。
 裁判員への影響だけでなく、職業裁判官に対する影響も考えられるのではないか(職業裁判官も人の子であり、感情を有する存在であることは裁判員とかわりがないであろう)。
 たとえば、有罪の結論を出したい職業裁判官が、評議の場で情に訴えるような裁判員に対する説得を行ったり、同時に損害賠償命令制度が導入されることを前提にすれば、賠償命令での賠償金額が通常の民事訴訟における賠償額よりも過大な額になるなどの問題も生ずるのではないか。
 何よりも、「もし被告人が無実だったら、どうするのだろう」との疑問が生ずる。犯罪被害者は多大な労力・費用を費やして訴訟活動を行い、場合によっては被告人との対峙によって二次被害を受けることになろう。この場合、被告人も防御について多大な負担を強いられるであろう。結果として無実の人に対して訴訟参加を行っていたのであれば、一体だれがどのように責任を取るのであろうか。社会制度の問題であるから、「自己責任」では済まされない問題である。
 
 なお、「被害者と司法を考える会」(ここをクリック)のサイトに、被害者参加制度に関する同会の見解が掲載されている。「急がないで」「我々が本当に求めるのは、きちんとした制度設計です」とする同会の見解に私は基本的に賛同するものである。

 法案のうち、被害者参加に関する規定を以下に抜粋する。
第三節 被害者参加
 第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
  一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条    第一項、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二    十七条までの罪
  三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯    罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
  四 前三号に掲げる罪の未遂罪
 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。

 第三百十六条の三十四 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。

   公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。

   裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。

   裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる。

   前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。

 第三百十六条の三十五 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。

 第三百十六条の三十六 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。

   前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項から第三項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。

 第三百十六条の三十七 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。

   前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。

 第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。

   前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。

   第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。

 第三百十六条の三十九 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる。

   前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。

   裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたときその他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

   裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で、被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

   裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

  第三百五十条の八中「第二百九十一条第二項」を「第二百九十一条第三項」に改める。

 
追記:「被害者と司法を考える会」サイト(ここをクリック)に本ブログからのリンクを許可してくださった同会代表の方に感謝します。
posted by 一法律学徒 at 01:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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