その袴田事件の確定第一審に左陪席裁判官として関与された元裁判官の熊本典道氏が最近ブログ「裁判官の良心」を開設されておられます。
熊本氏は袴田事件の確定第一審第2回公判から主任裁判官として事件を担当され、無罪であるとの心証を抱かれて一度は無罪判決を起草したものの、裁判長ともう一人の陪席裁判官を説得できずに結局死刑判決を書かされることになりました。その後熊本氏は退官し弁護士・大学講師を歴任されましたが(ブログ「裁判官の良心」によると現在は弁護士登録も抹消されておられるようです)、今年になって「袴田事件では無罪の心証を抱いていた」という事を公表され、裁判所法が定める「評議の秘密」を漏らしたのではないかとの批判も受けておられます。
ご本人はその事について、別に特別なことをしたわけではない、「過ちを改めるにはばかる事なかれ」という先人の言葉を引用して
「何事にもいえることである」と昨日(6月28日)の記事で述べておられます。フランスの冤罪事件(パトリック・ディルス事件)で「司法は、自らの誤りを認めなければならない」と破毀院検事が論告した事と熊本元裁判官が引用された言葉がオーバーラップするようです。
皆さんにも熊本元裁判官のブログを拝見される事をお薦めします。リンクはしませんが、「裁判官の良心」で検索するとすぐに見つかります。
おやぢの考え方として取り調べの録画の公開は賛成であり、いままでなぜ行われなかったかというほうが疑問です。韓国は2、3年前に編集なしの公開になりました。日本で取り調べが録画されて公開されたテープがあるそうですが、明らかに編集されているそうです。他人の音声が「はい、私です」といっています。おやぢもテープを公開した番組をみましたが、随所にブツっと切れた所がありました。米国は白人による黒人への差別的な裁判があったために、陪審制はその是正のために市民の目からみて公平な裁判かどうかを確かめるという政策のひとつであり、日本の裁判員制度のように「市民感覚のある裁判」というなにやらわけのわからない概念のための導入とは全く違います。今回は袴田事件のことですね、元プロボクサーだったそうで、肉体は頑健だったようですが今は40年間の拘禁生活で肉体・精神の異常があると龍谷大の石塚伸一教授は言っておられました。
死刑判決した三人の判事の中でご存命なのがこの元判事さんでしたね。袴田氏は70歳を超えたいま死ぬまで再審もされずに居るとは。
袴田事件の熊本元裁判官は、先日東京拘置所に行かれて袴田さんに面会を申し出られたそうですが、かなわなかったそうです。
ただし、面会人の方に「熊本さんはいい人だ、会っても良い」と伝えられ、それをお聞きした熊本元裁判官が涙を流されたそうです。