2007年07月28日

インスタント・ラーメン発明者とウルマンの詩

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 写真はインスタント・ラーメンの発明者である安藤百福さんがラーメンを作った小屋と、その中の様子です。もちろん博物館の中に復元されていたものです。当時の生活臭がします。その安藤さんが東洋紡の会長からもらったサミュエル・ウルマンの詩「青春」が書かれた額を大事にされておられたそうです。


 大阪・池田のインスタント・ラーメン発明記念館に行ってきました。今年、1月5日に96歳でお亡くなりになられた安藤百福さんが
チキンラーメンを作られた発明の軌跡や、世界各国で販売されているカップ麺などが展示されていましたが、ひときわ目を引くのは安藤さんの遺品でした。高齢になられてからもゴルフを楽しまれ、ipodで音楽を聴いておられたそうです。
その安藤さんが大事にしておられた額縁には、東洋紡の会長の書かれたサミュエル・ウルマンの詩が入っていました。まさに96まで生きた実業家の精神を象徴しているような「青春」の詩です。以下にメモしてきたものを転載します。

青春 サムエル・ウルマンの詩より

青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。

年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる。

歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。

人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる、

希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる。


インスタント食品やカップラーメンが象徴するような大量消費・大量廃棄文化・早く結果だけだせば良いという物質至上文明が人間の精神文化を破壊しているとの持論を持つ一法律学徒ですが、安藤氏の「青春の精神」には学ぶところがありそうです。

 なお、インスタント・ラーメン発明記念館のサイトは、以下の通りです。http://www.nissin-noodles.com/index.html
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2007年07月21日

飲酒運転の半数は依存症?

eyes0566.jpgフリー素材集からいただいてきた日本酒の写真です。そもそも日本には「酒はモノを清める」という感覚があるからでしょうか。飲酒運転等が大きく取り沙汰されるようになったのはここ数年の事です。最近、危険運転致死傷罪や業務上過失致死傷罪が改正され、厳罰化がさらに進んでいます。しかし刑罰以外の手段で飲酒運転を防止する事はもとより、厳罰化で刑事施設に収容された方の処遇も考えなおさねばならないのではないでしょうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070720-00000007-yom-sociより転載
飲酒運転の半数「アルコール依存症」…調査で相関関係判明
7月20日14時39分配信 読売新聞
 飲酒運転の違反歴がある男性ドライバーのうち、ほぼ2人に1人はアルコール依存症の疑いがあることが、国立病院機構久里浜アルコール症センターの樋口進医師が神奈川県内で実施した調査でわかった。

 一般男性の場合、依存症が疑われる人は20人に1人と推計されており、自分の行動を抑制できなくなるアルコール依存症と飲酒運転との相関関係が初めてデータで裏付けられた。調査を受け、政府は依存症のドライバーに対する治療の方策などについて本格的な検討に入る。

 今回の調査は、樋口医師が神奈川県警と共同で実施した。今年1〜6月の間に免許取り消し処分者講習を受けた人のうち、飲酒運転の違反歴がある約200人を対象に、医療機関で採用されている複数の検査方法で依存症の疑いがあるかどうかを探った。検査は、主に飲酒習慣や自己抑制力の低下具合を調べるもので、国際的に信用性が高い検査方法の場合、男性で「疑いあり」の該当者は48・7%だった。この検査方法によるサンプル調査(約1200人)から、一般男性の中で依存症が疑われる人の割合は約5%と推計されている。


 最近、警察関係の方の集中講義を受ける機会がありましたが、その方のお話では、危険運転致死傷罪で長期刑を受けた方は従来の交通刑務所ではなく、LA級受刑者として長期刑の対象者を収容している刑務所に収容されているようです(他の受刑者と異なったプログラムは設定していないとの事でした)。
 しかし、飲酒運転の常習者はまずその依存癖を除去するプログラムを受けさせるべきであって、単に長期刑を科すだけでは本当の問題解決にはならないと思います。危険運転致死傷罪など交通事犯に対する刑の動向を検討すると共に、受刑者に対する矯正プログラムも検討するべきであると思います。
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2007年07月20日

最1小判平成19年04月23日について

最高裁第一小法廷でいわゆる交通違反の速度測定システムの正確性にが立証されていないとして原審(仙台高裁秋田支部)が公訴棄却とした判決に対する上告審において、原審を破棄差し戻しにした判例が出されています。
最高裁サイト(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34551&hanreiKbn=01)によると、「高速走行抑止システムによる速度測定結果の正確性について,何ら証拠調べを行わず検察官に釈明を求めたり追加立証を促すなどすることもなく,プラス誤差が生じないことの証明が十分でないとした原判決を,審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあるとして破棄差し戻した事例」とされています。
 以下に全文を転載します。私は、裁判所が検察官に対して釈明義務違反・追加立証を促さないことを違法とすることは現行刑訴法の当事者主義と相容れないと考えます。この点について、本判決はあくまでも控訴審が証拠調べを一切行わずに差戻しもせずに記録だけで判決をした点に違法があるということに問題があるのであって、一般的に裁判所が検察官に対する釈明義務があるとしたものではないと考えます。
 なお、本判決は疑問解消・刑事訴訟法(日本評論社サイトを参照)で担当の教授が取り上げて解説を加えてくださるそうで、今から楽しみにしています。上訴の箇所で触れてくださるそうです。


道路交通法違反被告事件
最高裁判所第一小法廷平成18年(あ)第726号
平成19年4月23日判決


       主   文

原判決を破棄する。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。


       理   由

 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するもので本件に適切でないか,実質において事実誤認の主張であり,その余は,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論にかんがみ職権で判断すると,原判決は以下の理由により,破棄を免れない。
1 第1審判決が認定した本件の罪となるべき事実の要旨は,次のとおりである。
 被告人は,平成16年8月16日午後3時2分ころ,秋田県内の道路で,法定最高速度である60km毎時を32km超える92km毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行した。
2 記録によれば,原判決に至る経過は次のとおりである。
 被告人は,犯行場所の道路に設置された三菱電機株式会社製の高速走行抑止システム(三菱RS−2000B型。以下「本件装置」という。)により,時速92kmで普通乗用自動車を運転して進行したと計測,撮影されたものであるが,第1審公判において,その速度測定結果の正確性を争った。
 第1審判決は,本件装置の機能等との立証趣旨で取り調べたその取扱説明書や本件装置の保守,点検等に当たっている会社員の証言等により,本件装置は指定された速度を超えて走行する車両のみを撮影するもので,実際の速度より高い測定値を示すプラス誤差は出ない構造になっており,理論的にも実際の使用上でも,正常に作動している限り,その正確性に何らの問題もないことが認められるとした上で,本件前後の定期点検や自動自己点検の際に異常がなかったことなどから本件当時も正常に作動していたと認められるとし,そのほか,本件前後に本件装置により速度違反として撮影された車両の運転者6名がいずれも違反事実を認め,その略式命令が確定していることなどを指摘し,上記犯罪事実を認定して被告人を罰金6万円に処した。
 被告人が事実誤認を理由に控訴し,本件装置の信用性,測定値の正確性等を裏付ける証拠がないから,これらについて事実調べをする必要があると主張して,本件装置の現場検証等の証拠調べを請求した。しかし,原審裁判所は,第1審の証拠関係により有罪かどうかの判断をするのが可能かつ相当と考えるとして,これらをすべて却下して直ちに結審し,その際,検察官に対して釈明を求めたり追加立証を促すようなことは全くしなかった。
3 原判決は,第1審判決を破棄し,本件公訴を棄却する旨の判決を言い渡したが,その理由の要旨は,次のとおりである。
 本件装置による測定値の正確度について,本件装置の取扱説明書等には「(0%〜−6%)−1km/h以内」などと記載されているところ,これらの記載はマイナス誤差しかないことを前提としているが,誤差というのは通常マイナス誤差もプラス誤差もあると考えるべきであり,マイナス誤差しかないことにつき確たる根拠のあることが証明される場合を除けば,たやすくマイナス誤差しかないという前提に立つことはできない。第1審公判の証人は,測定値にプラス誤差は生じない旨供述するが,その根拠については三菱電機からの説明資料で確認したとするにとどまり,その裏付けとなる資料は証拠として提出されていない。本件においては,測定値にマイナス誤差しかないことを裏付けるに足りる客観的データ等の証拠は何ら存在しない。したがって,本件の証拠状況の下においては,本件装置による被告人車両の測定値が92km毎時であったというだけでは,なお実際には90km毎時未満の速度で走行していたのではないかとの合理的な疑いが残る。そのほか,第1審判決が挙げる事情によっても,本件装置の測定値の正確性を認めるに足りない。
4 しかしながら,原判決の上記判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
 記録に照らすと,本件では,第1審公判で取り調べられた本件装置の取扱説明書や証人の供述等の証拠により,本件装置による速度測定の正確度につきプラス誤差は生じないことが一応立証されており,被告人側から,これに疑いを入れるような特段の具体的主張,立証は全く示されていない。それにもかかわらず,原判決は,上記のとおり,取扱説明書の記載や証人の供述を根拠付ける客観的資料がないとして,プラス誤差が生じないことについての証明が十分でないと判断したものである。しかし,第1審公判における検察官の立証の程度は上記のとおりであるから、このような場合,原審裁判所において,検察官の立証がなお不十分であると考えるなら,検察官に対して,プラス誤差が生じないことを客観的に裏付ける資料を追加して証拠調べを請求するかどうかにつき釈明を求め,必要に応じその請求を促すなどして,更に審理を尽くした上で判決すべきであった。殊に本件においては,第1審公判で証人がプラス誤差が出ないことを説明資料で確認したと供述している事情があり,原判決もそのことを指摘しているのであるから,少なくともその資料について追加立証を促すことは容易に行い得たはずである。
 しかるに,原判決は,検察官に追加立証を促すなどすることなく直ちに判決を言い渡して第1審判決を破棄した上,上記客観的資料の存否,内容等について更に審理を尽くさせるため事件を差し戻すこともせずに,犯罪事実が認められないことを前提として公訴棄却の自判をしたものである。原判決がこのような措置に出た理由として挙げるところは,いずれもその判断を是認する根拠とはなり得ない。 
5 そうすると,原判決は,審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあり,破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号,3号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,上記指摘の点などについて更に審理を尽くさせるため,本件を仙台高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官水野美鈴 公判出席
(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉徳治 裁判官 才口千晴)
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2007年07月17日

フランスの陪審制度について

X-200702082334162966.jpg 右はフランス司法省サイト(http://www.justice.gouv.fr/index.php?rubrique=10031&ssrubrique=10033&article=12027)に掲載されている重罪院公判廷の図です。フランスにおいては、法定刑が10年以上とされる懲役刑・禁錮刑(日本と違い懲役・禁錮刑とも労役の強制義務はなく、収容される施設が異なるだけです)が科せられる重罪(crime)については、職業裁判官3人、陪審員9人から構成される重罪院という裁判所が管轄権を有します。
 重罪院は各県庁所在地ごとに3ヶ月ごとに開廷される非常設の裁判所です。非常設であるのは一般市民である陪審員を長く裁判所にとどめておくことができないからです。
 日本の裁判員制度もフランス重罪院の制度をモデルにした面が大きいようです。

 フランスの陪審制は、職業裁判官と一般市民から抽籤で選ばれる陪審員が協同して事実認定を行い、有罪の場合には量刑判断も行うというものです。
 上の図に掲載されている重罪院公判廷に登場する人々について簡単に解説を加えます。
○法壇の上にいる3名の職業裁判官:赤い法服を着用しているのが裁判長(président)です。日本の高裁に相当する控訴院(cour d’appel)の部長判事か陪席判事が重罪院の裁判長となります。
黒い法服を着用している裁判官が陪席判事(conseiller)です。重罪院の陪席判事は控訴院判事か、日本の地方裁判所に相当する大審裁判所の裁判官から選ばれます。
○陪審員たち(jurés):裁判官脇にいる人々です。一般市民から抽籤で選ばれます。その人数は、第一審では9人、控訴審では12人です。
○控訴院の上席検事(avocat général):重罪院に立ち会う検察官は控訴院検事局の検事長または上席検事です。上の図では左から2番目の壇に座っています。図では黒い法服を着用していますが、私がパリの重罪院を傍聴したときの立会い検察官は裁判長と同じ赤い法服を着用していました。検察官はフランスでは裁判所に附置された検事局(parquet)に所属する司法官(magistrat)です。社会を代表して法の適用を裁判官に要求する職務、つまり公訴の維持・追行を行います。
○被告人の弁護人(avocat de la defence):右の席に座っている二人です。フランスでは弁護士も黒い法服を着用します。私が傍聴した法廷では、被告人の席は弁護人の席のすぐ近くにあり、弁護人と相談がしやすいような構造になっていました。
○私訴原告人代理人弁護士(avocat de la partie civile):一番左の席に座っている黒い法服を着た弁護士です。フランス法では、刑事裁判所に対して犯罪によって被害を受けたと主張する人や一定の社会団体が損害賠償請求権を行使することができます。この訴えを私訴、犯罪被害者などの損害賠償請求権を行使する人や団体を私訴原告人(partie civile)といいます。私訴があった場合には、検察官は事件を不起訴にすることはできません。私訴原告人は公判前の下調べの手続きである予審の段階から、予審判事に対して証拠の収集を要求することなどができます(予審の段階で公判に付すだけの証拠がないとされた場合には免訴といって手続が打切りになります)。
 その結果、私訴原告人は刑事事件で予審判事が集めた証拠を民事上の請求のための立証に使えることになります。

 フランスの陪審制度については、今後ともフォローしていく予定です。
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2007年07月16日

裁判員法67条の解釈

houmusyou002.jpg写真は法務省の旧庁舎です。いわゆる赤煉瓦といえば、法務省の代名詞ですが、建設にあたって外国に対して国威を示す意図があったようです。その赤煉瓦が、裁判員法67条の公式解釈(?)を示しています。

問題となった条文は以下の通りです。

(抜粋:裁判員法)
第四章 評議
 (評議)
第六十六条 第二条第一項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。

2 裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。

3 裁判長は、必要と認めるときは、第一項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。

4 裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

5 裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。

 (評決)

第六十七条 前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

2 刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。


この裁判員法67条の解釈について、法務省サイト(http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/info/room/01.html)に以下の記事が載っていました。
○ 裁判員裁判における有罪・無罪の評決について
最近,報道されたところによりますと,「裁判員裁判の評決において,裁判官3名と裁判員1名が被告人は有罪であるとの意見であり,裁判員5名が被告人は無罪であるとの意見である場合,裁判員法67条1項の規定(「・・・評議における裁判員の関与する判断は,・・・構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。」)のため,被告人は無罪であるという判断をすることができない。」という誤解をしている方がいらっしゃるようです。
しかしながら,上に挙げられた例の場合には,被告人は無罪とされることになります。
一般に,刑事裁判においては,犯罪の証明があったと認められる場合に有罪とされ,その証明があったとは言えない場合に無罪とされますので,判断の対象となるのは,犯罪の証明があったかどうかということになります。したがって,この場面において,裁判員法67条1項の規定により,構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によらなければならないとされるのは,この犯罪の証明があったという判断についてなのです。
そして,上の例の場合,裁判官3名と裁判員1名が,犯罪の証明があり,被告人は有罪であるという意見ですが,この意見は,裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の過半数の意見ではないのですから,犯罪の証明があったとは認められないことになります。したがって,被告人は無罪とされることになるのです。


これについて、以下のニュース報道がなされています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007071502032623.html
『無罪』過半数でも全裁判官『有罪』なら? 『双方の意見必要』 条文解釈で混乱 
2007年7月15日 朝刊

 裁判員法67条(評決)評議における裁判員の関与する判断は、(中略)構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

 二〇〇九年から始まる裁判員制度で、被告が有罪かどうかを決める「評決」を規定した裁判員法六七条について、法曹界の一部から「条文の記述が不十分で、本来の意図と違った解釈ができる」という指摘が出ている。法務省は「明らかな誤解。誤った解釈が広がるのは困る」として、ホームページに新たに解説文を載せ、“火消し”に乗り出した。

 殺人などの重大事件を対象とする裁判員裁判は、プロの裁判官三人と一般から選ばれた六人の裁判員によって審理が進められる。最後に多数決で評決が行われるが、弁護士たちが問題にしているのは「評議の判断は、裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数の意見による」という条文だ。

 条文の趣旨は、有罪の評決をする場合は「有罪意見が過半数で、その中には裁判官と裁判員の双方が含まれることが必要」ということ。仮に一般の裁判員六人全員が有罪を主張しても、裁判官が一人も含まれないときは有罪は成立せず、無罪となる。

 だが、裁判員制度に反対する高山俊吉弁護士らは、その逆のケースを示して別の解釈をする。

 「仮に裁判員六人が無罪で、裁判官三人が有罪の場合、条文をそのまま読むと、無罪が過半数でも裁判官の意見が含まれないので、無罪にも有罪にもならずに評議は成立しない。だれかが意見を変えるまで評議を続けることになる」

 法務省の担当者はこの解釈を真っ向から否定した上で、「当然、無罪になる」と説明する。

 「六七条にある『評議の判断』とは、有罪か無罪かではなく、『検察官が有罪を証明できたかどうか』。裁判官三人が有罪意見でも過半数ではないのだから、犯罪の証明がないとして無罪となる」

 法務省の主張は、裁判員法は刑事訴訟法の特別法であり、刑訴法にある「犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言い渡しをしなければならない」という規定は当然、裁判員裁判にも適用され、そのことを裁判員法にわざわざ明記する必要はないという理屈だ。

 同省は十日付で、高山弁護士らが示した評決例をホームページで取り上げ、「双方の意見を含む過半数に達していないため、犯罪の証明があったとは認められず、無罪となります」との解説を掲載した。

 だが、反対派の同弁護士だけでなく、元裁判官の学者や裁判員制度に賛成する弁護士の中にも「六七条は意味が通りにくく不親切だ。評決不能という解釈の余地もある。裁判員が誤解しないように明文化すべきだ」という指摘が出ている。


かなり問題のある条文だと思います。単純に解釈すれば、評決不成立と読むことができるので、もし法務省の公式見解のような立場ならば、
「被告人の罪責を肯定する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。もし評議の結果被告人の罪責を肯定する意見が構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見に達しない場合には、被告人の罪責を否定したものとする」というように改正するべきではないでしょうか。
 なお、法務省見解はあくまで裁判所の法解釈を左右するものではないことを念のため付言しておきます。

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美しい星???

kikkoro.jpg友人宅のテレビの上にあった「愛・地球博」のマスコットのモリゾーとキッコロのぬいぐるみです。環境博が終わった翌年になって、いつも「美しい国」と叫んでいる御方が今度は「美しい星」と騒ぎ出したようです。
温暖化問題で、温室効果ガスを2050年まで半減させると言っているようですが、基準年はいつにするのでしょうか。
京都議定書については、カナダがすでにギブ・アップ宣言を出したようですが、日本も到底当初の目標を達成することは無理でしょう。
ヨーロッパはソ連崩壊・東西ドイツ統合などがあった年が基準年となっている事もあり、楽に達成できるようですが、そもそも各国の経済状況なども勘案して現実的な目標を設定しなおすべきではないかと考えます。
日本もアメリカの後に続いて加わったものの、ブッシュ政権が離脱したので、昇ったはしごをはずされたようなものでしょう。
無責任な目標を勝手に設定して、「美しい国」「美しい星」などどわめいている首相がいる国は、国際社会からの信頼を失いかねないのではないでしょうか。


http://www.asahi.com/special/070110/TKY200705240397.htmlより、以下のニュースを引用します。
温暖化対策は「美しい星50」 首相、サミットで表明へ
2007年05月24日21時46分
安倍首相は24日、地球温暖化対策に世界全体の参加を呼びかける戦略「美しい星50」を発表した。2050年までに全世界の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を現状から半減させることを世界共通の目標として掲げ、ポスト京都議定書となる13年以降には米国、中国、インドなどすべての主要排出国が参加できる枠組みづくりを提唱した。同議定書で日本が12年までに90年比で6%削減するとした目標の達成に向け、計画を見直す考えも示した。

 同日夜、東京都内であったアロヨ・フィリピン大統領らアジア各国首脳が参加した会議での講演で表明した。6月に独ハイリゲンダムで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で各国首脳に伝え、来年7月の北海道洞爺湖サミットに向けて環境分野での日本の主導権発揮を目指す。

 首相は排出量削減のための長期戦略として、50年までに半減するとの数値目標を提案。これを実現するため、経済成長と排出削減を同時に追求できる「革新的技術の開発」や「低炭素社会づくり」を掲げ、原子力発電技術の安全で平和的な利用拡大などを挙げた。

 また中期戦略として、京都議定書の第1約束期間(08〜12年)後の枠組みづくりに向けた「3原則」を表明した。(1)排出量が世界1、2位の米国や中国などすべての主要排出国が参加し(2)先進国や途上国、新興国それぞれの事情に配慮した多様な枠組みとし(3)省エネ技術を生かし、環境保全と経済発展を両立させることを提唱した。

 首相はこれに関連して「京都議定書は温暖化対策の第一歩だったが、限界も認めざるを得ない」としたうえで、「米国、中国、インドなど主要排出国すべてが参加する枠組みを構築する必要がある」と述べた。

 また、途上国からの参加を促すため、日本などが排出削減に熱心な途上国を支援する「資金メカニズム」の構築を目指すことを表明。日本の省エネ技術を広め、途上国が温暖化対策と公害対策を一体で取り組める仕組みづくりや、排出量取引などの手法を検討していく考えを明らかにした。

 一方、京都議定書で日本に課せられた12年までの排出量6%削減という目標の達成に向け、今年度中に京都議定書の目標達成計画を見直すことも表明。排出を「1人1日1キログラム」減らすよう家庭や職場の努力を呼びかける、と語った。環境省によると、例えば冷房温度を1度高くすれば35グラム、シャワー時間を1分減らすと74グラムの削減になるという。

 首相はこの戦略をふまえ、温暖化対策の論議をリードしたい考えだ。だが、数値目標の設定などをめぐって欧州連合(EU)と米中などとの立場の隔たりは大きく、各国を巻き込む枠組みづくりは難航が予想される。

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2007年07月08日

特許法重要条文

tokkyo01.jpg写真は特許庁です。特許制度は維持するだけで莫大な費用がかかっているそうです。この建物の中で多くの職員が審査・登録に勤しんでおられるのでしょう。ちなみに、特許庁サイト(こちらをクリック)によれば、アメリカの特許庁の玄関には、リンカーンの「特許制度は、天才の火に利益という油を注いだ」(The patent system added the fuel of interest to the fire of genius)という言葉が刻み込まれているそうです。

特許法の勉強をしていると、記憶するべき事が多くてうんざりします。記憶に便利なように、重要条文だけを取り出してアップすることにしました。
特許法
 第一章 総則(第一条―第二十八条)
 第二章 特許及び特許出願(第二十九条―第四十六条の二)
 第三章 審査(第四十七条―第六十三条)
 第三章の二 出願公開(第六十四条―第六十五条)
 第四章 特許権
  第一節 特許権(第六十六条―第九十九条)
  第二節 権利侵害(第百条―第百六条)
  第三節 特許料(第百七条―第百十二条の三)
 第五章 削除
 第六章 審判(第百二十一条―第百七十条)
 第七章 再審(第百七十一条―第百七十七条)
 第八章 訴訟(第百七十八条―第百八十四条の二)
 第九章 特許協力条約に基づく国際出願に係る特例(第百八十四条の三―第百八十四条の二十)
 第十章 雑則(第百八十五条―第百九十五条の四)
 第十一章 罰則(第百九十六条―第二百四条)
 附則

   第一章 総則


(目的)
第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
2  この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。
3  この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一  物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二  方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三  物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
4  この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)
第十七条の二  特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一  第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二  拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三  拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四  拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から三十日以内にするとき。
2  第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。
3  第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第四項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4  前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。
5  前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一  第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二  特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三  誤記の訂正
四  明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
6  第百二十六条第五項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

   第二章 特許及び特許出願
(特許の要件)
第二十九条  産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一  特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二  特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三  特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
2  特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

第二十九条の二  特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法 (昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項 の規定により同項 各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

(発明の新規性の喪失の例外)
第三十条  特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。
2  特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3  特許を受ける権利を有する者が政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官が指定するものに、パリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品することにより、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、第一項と同様とする。
4  第一項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明が第一項又は前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

(特許を受けることができない発明)
第三十二条  公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

(特許を受ける権利)
第三十三条  特許を受ける権利は、移転することができる。
2  特許を受ける権利は、質権の目的とすることができない。
3  特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。

第三十四条  特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
2  同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。
3  同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があつたときも、前項と同様とする。
4  特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。
5  特許を受ける権利の相続その他の一般承継があつたときは、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
6  同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に二以上の届出があつたときは、届出をした者の協議により定めた者以外の者の届出は、その効力を生じない。
7  第三十九条第七項及び第八項の規定は、第二項、第三項及び前項の場合に準用する。

(職務発明)
第三十五条  使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
2  従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。
3  従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4  契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。
5  前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

(特許出願)
第三十六条  特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一  特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二  発明者の氏名及び住所又は居所
2  願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
3  前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  発明の名称
二  図面の簡単な説明
三  発明の詳細な説明
4  前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一  経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二  その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5  第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6  第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一  特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二  特許を受けようとする発明が明確であること。
三  請求項ごとの記載が簡潔であること。
四  その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7  第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

第三十七条  二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。

(共同出願)
第三十八条  特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。

(先願)
第三十九条  同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
2  同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
3  特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
4  特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第四十四条第二項(第四十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
5  特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
6  発明者又は考案者でない者であつて特許を受ける権利又は実用新案登録を受ける権利を承継しないものがした特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から第四項までの規定の適用については、特許出願又は実用新案登録出願でないものとみなす。
7  特許庁長官は、第二項又は第四項の場合は、相当の期間を指定して、第二項又は第四項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
8  特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項又は第四項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。

(拒絶の査定)
第四十九条  審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一  その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
二  その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
三  その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
四  その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
五  前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
六  その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
七  その特許出願人が発明者でない場合において、その発明について特許を受ける権利を承継していないとき。

   第三章の二 出願公開
(出願公開)
第六十四条  特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
2  出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
一  特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二  特許出願の番号及び年月日
三  発明者の氏名及び住所又は居所
四  願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
五  願書に添付した要約書に記載した事項
六  外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
七  出願公開の番号及び年月日
八  前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3  特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第三十六条第七項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。

(出願公開の効果等)
第六十五条  特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
2  前項の規定による請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。
3  第一項の規定による請求権の行使は、特許権の行使を妨げない。
4  出願公開後に特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第百十二条第六項の規定により特許権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき(更に第百十二条の二第二項の規定により特許権が初めから存在していたものとみなされたときを除く。)、又は第百二十五条ただし書の場合を除き特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
5  第百一条、第百四条から第百五条の二まで、第百五条の四から第百五条の七まで及び第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条 及び第七百二十四条 (不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が特許権の設定の登録前に当該特許出願に係る発明の実施の事実及びその実施をした者を知つたときは、同条 中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「特許権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。
   第四章 特許権
    第一節 特許権
(存続期間)
第六十七条  特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
2  特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。

(特許権の効力)
第六十八条  特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

(存続期間が延長された場合の特許権の効力)
第六十八条の二  特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。

(特許権の効力が及ばない範囲)
第六十九条  特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。
2  特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
一  単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
二  特許出願の時から日本国内にある物
3  二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。

(特許発明の技術的範囲)
第七十条  特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
2  前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
3  前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。

(他人の特許発明等との関係)
第七十二条  特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。

(共有に係る特許権)
第七十三条  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2  特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

(専用実施権)
第七十七条  特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
2  専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
3  専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4  専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
5  第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。

(通常実施権)
第七十八条  特許権者は、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができる。
2  通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する。

(先使用による通常実施権)
第七十九条  特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。

(自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定)
第九十二条  特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2  前項の協議を求められた第七十二条の他人は、その協議を求めた特許権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする特許発明の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
3  第一項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
4  第二項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第七十二条の他人は、第七項において準用する第八十四条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
5  特許庁長官は、第三項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第七十二条の他人又は特許権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
6  特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第三項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
7  第八十四条、第八十五条第一項及び第八十六条から前条までの規定は、第三項又は第四項の裁定に準用する。

(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条  特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2  前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
3  第八十四条、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。

(通常実施権の移転等)
第九十四条  通常実施権は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
2  通常実施権者は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権を除き、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。
3  第八十三条第二項又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。
4  第九十二条第三項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。
5  第九十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権に従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が消滅したときは消滅する。
6  第七十三条第一項の規定は、通常実施権に準用する。

(登録の効果)
第九十八条  次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一  特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、放棄による消滅又は処分の制限
二  専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
三  特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2  前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。

第九十九条  通常実施権は、その登録をしたときは、その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。
2  第三十五条第一項、第七十九条、第八十条第一項、第八十一条、第八十二条第一項又は第百七十六条の規定による通常実施権は、登録しなくても、前項の効力を有する。
3  通常実施権の移転、変更、消滅若しくは処分の制限又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅若しくは処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。

    第二節 権利侵害
(差止請求権)
第百条  特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

(侵害とみなす行為)
第百一条  次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
一  特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
二  特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
三  特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
四  特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
五  特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
六  特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

(損害の額の推定等)
第百二条  特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
3  特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

(過失の推定)
第百三条  他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。

(生産方法の推定)
第百四条  物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。


(特許権者等の権利行使の制限)
第百四条の三  特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
2  前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

(相当な損害額の認定)
第百五条の三  特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

   第六章 審判
(特許無効審判)
第百二十三条  特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
一  その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。
二  その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき。
三  その特許が条約に違反してされたとき。
四  その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。
五  外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
六  その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。
七  特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。
八  その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第三項から第五項まで(第百三十四条の二第五項において準用する場合を含む。)又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。
2  特許無効審判は、何人も請求することができる。ただし、特許が前項第二号に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由とするものは、利害関係人に限り請求することができる。
3  特許無効審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。
4  審判長は、特許無効審判の請求があつたときは、その旨を当該特許権についての専用実施権者その他その特許に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。

第百二十五条  特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、特許が第百二十三条第一項第七号に該当する場合において、その特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、その特許が同号に該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。

(延長登録無効審判)
第百二十五条の二  特許権の存続期間の延長登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その延長登録を無効にすることについて延長登録無効審判を請求することができる。
一  その延長登録がその特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められない場合の出願に対してされたとき。
二  その延長登録が、その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは登録した通常実施権を有する者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていない場合の出願に対してされたとき。
三  その延長登録により延長された期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。
四  その延長登録が当該特許権者でない者の出願に対してされたとき。
五  その延長登録が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたとき。
2  第百二十三条第三項及び第四項の規定は、延長登録無効審判の請求について準用する。
3  延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、その延長登録による存続期間の延長は、初めからされなかつたものとみなす。ただし、延長登録が第一項第三号に該当する場合において、その特許発明の実施をすることができなかつた期間を超える期間の延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、当該超える期間について、その延長がされなかつたものとみなす。

(訂正審判)
第百二十六条  特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一  特許請求の範囲の減縮
二  誤記又は誤訳の訂正
三  明りようでない記載の釈明
2  訂正審判は、特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は、請求することができない。ただし、特許無効審判の審決に対する訴えの提起があつた日から起算して九十日の期間内(当該事件について第百八十一条第一項の規定による審決の取消しの判決又は同条第二項の規定による審決の取消しの決定があつた場合においては、その判決又は決定の確定後の期間を除く。)は、この限りでない。
3  第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同項ただし書第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあつては、外国語書面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4  第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。
5  第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
6  訂正審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。ただし、特許が特許無効審判により無効にされた後は、この限りでない。

第百二十七条  特許権者は、専用実施権者、質権者又は第三十五条第一項、第七十七条第四項若しくは第七十八条第一項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、訂正審判を請求することができる。

第百二十八条  願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決が確定したときは、その訂正後における明細書、特許請求の範囲又は図面により特許出願、出願公開、特許をすべき旨の査定又は審決及び特許権の設定の登録がされたものとみなす。

(共同審判)
第百三十二条  同一の特許権について特許無効審判又は延長登録無効審判を請求する者が二人以上あるときは、これらの者は、共同して審判を請求することができる。
2  共有に係る特許権について特許権者に対し審判を請求するときは、共有者の全員を被請求人として請求しなければならない。
3  特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。
4  第一項若しくは前項の規定により審判を請求した者又は第二項の規定により審判を請求された者の一人について、審判手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。

(特許無効審判における訂正の請求)
第百三十四条の二  特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条第一項若しくは第二項又は第百五十三条第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一  特許請求の範囲の減縮
二  誤記又は誤訳の訂正
三  明りようでない記載の釈明
2  審判長は、前項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。
3  審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第五項において読み替えて準用する第百二十六条第三項から第五項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
4  第一項の訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす。
5  第百二十六条第三項から第六項まで、第百二十七条、第百二十八条、第百三十一条第一項及び第三項、第百三十一条の二第一項並びに第百三十二条第三項及び第四項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、第百二十六条第五項中「第一項ただし書第一号又は第二号」とあるのは、「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第一項ただし書第一号又は第二号」と読み替えるものとする。

(拒絶査定不服審判における特則)
第百五十八条  審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する。

   第八章 訴訟
(被告適格)
第百七十九条  前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。



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2007年07月07日

裁判員規則が制定されていました

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写真は最高裁です。最高裁は規則制定権を有することとなっており、それは憲法77条において以下の通り定められています。
第77条〔最高裁判所の規則〕
1 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

裁判員規則もこの規則制定権によって、裁判員法を補完するものとして制定されたものです。


 最高裁のHPに、「裁判員の参加する刑事裁判に関する規則」が掲載されていました。(最高裁サイトはこちらをクリック
重要な裁判所規則ですので、以下に全文を引用します(ただし、補足や別表は省略)。
裁判員制度については、今後ともフォローしていく予定です。

本規則は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)の施行の日から施行する。ただし、第二条、第十一条から第十三条まで、第十五条及び第四十七条の規定は、同法附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日から施行する。

平成十九年七月五日最高裁判所規則第七号
 裁判員の参加する刑事裁判に関する規則を次のように定める。

裁判員の参加する刑事裁判に関する規則

目次
第一章 総則(第一条−第五条)
第二章 裁判員
第一節 総則(第六条−第十条)
第二節 選任(第十一条−第三十五条)
第三節 解任(第三十六条−第三十八条)
第三章 裁判員の参加する裁判の手続
第一節 公判準備及び公判手続(第三十九条・第四十条)
第二節 刑事訴訟規則の適用に関する特例(第四十一条−第四十四条)
第四章 評議(第四十五条・第四十六条)
第五章 裁判員等の保護のための措置(第四十七条)
第六章 補則(第四十八条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この規則は、裁判員の参加する刑事裁判に関し、刑事訴訟規則(昭和二十三年最高裁判所規則第三十二号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

(裁判員裁判に関する事務の取扱支部)
第二条 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「法」という。)において定められた地方裁判所の権限に属する事務(以下「裁判員裁判に関する事務」という。)を取り扱う地方裁判所の支部は、地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則(昭和二十二年最高裁判所規則第十四号)第一条第二項の規定にかかわらず、別表の上欄に掲げる地方裁判所の支部に限るものとし、その取扱区域は、同表の下欄のとおりとする。

(対象事件からの除外についての意見の聴取・法第三条)
第三条 法第三条第一項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、あらかじめ、職権でこれをする場合には検察官及び被告人又は弁護人の意見を、請求によりこれをする場合には相手方又はその弁護人の意見を聴かなければならない。

(対象事件からの除外に関する決定の手続・法第三条)
第四条 法第三条第一項の決定及び同項の請求を却下する決定については、刑事訴訟規則第三十三条第三項及び第四項並びに第三十四条の規定を準用する。
2 法第三条第一項の決定及び同項の請求を却下する決定を検察官、被告人又は弁護人の面前において言い渡したときは、これらの者にはこれを送達し、又は通知することを要しない。

(対象事件からの除外に関する決定に対する即時抗告・法第三条)
第五条 法第三条第六項の即時抗告については、刑事訴訟規則第二百七十一条及び第二百七十二条の規定を準用する。



第二章 裁判員
第一節 総則
(裁判員等の旅費・法第十一条等)
第六条 裁判員、補充裁判員及び裁判員等選任手続(法第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続をいう。以下同じ。)の期日に出頭した裁判員候補者(以下「裁判員等」と総称する。)の旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の四種とし、鉄道賃は鉄道の便のある区間の陸路旅行に、船賃は船舶の便のある区間の水路旅行に、路程賃は鉄道の便のない区間の陸路旅行又は船舶の便のない区間の水路旅行に、航空賃は航空機を利用すべき特別の事由がある場合における航空旅行について支給する。
2 鉄道賃及び船賃は旅行区間の路程に応ずる旅客運賃(はしけ賃及びさん橋賃を含むものとし、運賃に等級を設ける線路又は船舶による旅行の場合には、運賃の等級を三階級に区分するものについては中級の、運賃の等級を二階級に区分するものについては下級の運賃)、急行料金(特別急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道百キロメートル以上のものには特別急行料金、普通急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道五十キロメートル以上のものには普通急行料金)及び座席指定料金(座席指定料金を徴する普通急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道百キロメートル以上のもの又は座席指定料金を徴する船舶を運行する航路のある区間の旅行の場合の座席指定料金に限る。)によって、路程賃は一キロメートルにつき三十七円の額(一キロメートル未満の路程の端数は、これを切り捨てる。)によって、航空賃は現に支払った旅客運賃によって、それぞれ算定する。
3 天災その他やむを得ない事情により前項に定める額の路程賃で旅行の実費を支弁することができない場合には、同項の規定にかかわらず、路程賃の額は、実費額の範囲内において、裁判所が定める。

(裁判員等の日当・法第十一条等)
第七条 裁判員等の日当は、出頭又は職務及びそれらのための旅行(以下「出頭等」という。)に必要な日数に応じて支給する。
2 日当の額は、裁判員及び補充裁判員については一日当たり一万円以内において、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については一日当たり八千円以内において、それぞれ裁判所が定める。

(裁判員等の宿泊料・法第十一条等)
第八条 裁判員等の宿泊料は、出頭等に必要な夜数に応じて支給する。
2 宿泊料の額は、一夜当たり、宿泊地が、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)別表第一に定める甲地方である場合においては八千七百円、乙地方である場合においては七千八百円とする。

(旅費等の計算・法第十一条等)
第九条 旅費(航空賃を除く。)並びに日当及び宿泊料の計算上の旅行日数は、最も経済的な通常の経路及び方法によって旅行した場合の例により計算する。ただし、天災その他やむを得ない事情により最も経済的な通常の経路又は方法によって旅行し難い場合には、その現によった経路及び方法によって計算する。

(裁判員候補者の本籍照会の方法・法第十二条)
第十条 地方裁判所は、市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区とする。以下同じ。)に対し、裁判員候補者について本籍の照会をするときには、当該市町村の選挙管理委員会が当該地方裁判所に送付する裁判員候補者予定者名簿に付して本籍を回答するよう求めることができる。

第二節 選任
(裁判員候補者の員数の算定及び割当て・法第二十条)
第十一条 地方裁判所は、次年に必要な裁判員候補者の員数を算定するに当たっては、対象事件(法第二条第三項に規定する対象事件をいう。)の取扱状況、呼出しを受けた裁判員候補者の出頭状況、法第三十四条第七項の規定による不選任の決定があった裁判員候補者の数その他の裁判員及び補充裁判員の選任状況並びに裁判員候補者名簿に記載をされた者の数の状況その他の事項を考慮しなければならない。
2 地方裁判所が前項の裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当てるに当たっては、各市町村の選挙管理委員会に対して選挙人名簿に登録されている者の数を照会した上で、同項の裁判員候補者の員数のうち、まず一人ずつを各市町村に割り当て、その残員数は、各市町村の選挙人名簿に登録されている者の数の当該地方裁判所の管轄区域内における選挙人名簿に登録されている者の総数に対する割合に応じて、これを各市町村に割り当てる方法によるものとする。この場合において、一人に満たない端数を生じたときは、裁判員候補者の総員数が同項の裁判員候補者の員数に満ちるまで、端数の大きい市町村から順次に、これを一人に切り上げる。
3 地方裁判所の支部において裁判員裁判に関する事務を取り扱う場合において、次年に必要な裁判員候補者の員数を算定するに当たっては、裁判員裁判に関する事務を取り扱う支部(以下「取扱支部」という。)についてはその取扱区域内において、取扱支部を除く地方裁判所については取扱支部の取扱区域を除く管轄区域内において、それぞれ第一項に規定する事項を考慮しなければならない。
4 前項の場合において、裁判員候補者の員数を管轄区域内の市町村に割り当てるに当たっては、取扱支部についてはその取扱区域内の市町村において、取扱支部を除く地方裁判所については取扱支部の取扱区域を除く管轄区域内の市町村において、それぞれ第二項に規定する方法によるものとする。

(裁判員候補者名簿の調製等・法第二十三条)
第十二条 裁判員候補者名簿は、別記様式により調製しなければならない。
2 地方裁判所の支部において裁判員裁判に関する事務を取り扱う場合には、裁判員候補者名簿は、取扱支部及び取扱支部を除く地方裁判所に区分して調製するものとする。この場合においては、取扱支部の裁判員候補者名簿はその取扱区域内の市町村の選挙管理委員会から送付を受けた裁判員候補者予定者名簿に基づいて、取扱支部を除く地方裁判所の裁判員候補者名簿は取扱支部の取扱区域を除く管轄区域内の市町村の選挙管理委員会から送付を受けた裁判員候補者予定者名簿に基づいて、それぞれ調製するものとする。
3 裁判員候補者予定者名簿及び裁判員候補者名簿は、これらに記載をされた者が自己に関する情報が記載されている部分の開示を求める場合を除いては、開示してはならない。

(裁判員候補者名簿からの消除の方法・法第二十三条等)
第十三条 地方裁判所が法第二十三条第三項(法第二十四条第二項において準用する場合を含む。第十五条第一項第一号において同じ。)又は第二十九条第三項本文(法第三十八条第二項(法第四十六条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定により裁判員候補者を裁判員候補者名簿から消除するに当たっては、当該裁判員候補者を消除したことが明確であり、かつ、消除された文字の字体(法第二十三条第二項(法第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者名簿にあっては、消除された記録)がなお明らかとなるような方法により行う。

(裁判員候補者の補充の場合の措置・法第二十四条)
第十四条 法第二十四条第一項の規定による補充する裁判員候補者の員数の割当てについては、第十一条第二項及び第四項の規定を準用する。
2 法第二十四条第二項において読み替えて準用する法第二十三条第一項に規定する裁判員候補者名簿については、第十二条の規定を準用する。

(地方裁判所による調査)
第十五条 地方裁判所は、法第二十三条第一項(法第二十四条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による裁判員候補者名簿の調製をしたときは、次に掲げる事項を調査するため、裁判員候補者に対し、調査票を用いて必要な質問をし、又は必要な資料の提出を求めることができる。
一 法第二十三条第三項の規定により裁判員候補者名簿から消除しなければならない場合に該当するかどうか 。
二 法第二十六条第三項(法第二十八条第二項(法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)、第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。次条及び第二十三条において同じ。)の規定により呼び出すべき裁判員候補者として選定された場合において法第二十七条第一項ただし書(法第二十八条第二項、第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定により呼び出すことを要しないものとされる場合に該当することとなることが見込まれるかどうか。
2 前項の規定により提出された調査票及び資料については、第十二条第三項の規定を準用する。

(呼び出すべき裁判員候補者の選定録の作成・法第二十六条)
第十六条 地方裁判所は、法第二十六条第三項の規定により呼び出すべき裁判員候補者を選定したときは、選定録を作成しなければならない。

(裁判員等選任手続の期日の通知・法第二十七条)
第十七条 裁判員等選任手続の期日は、これを検察官及び弁護人に通知しなければならない。

(呼出状の記載事項・法第二十七条)
第十八条 裁判員候補者に対する呼出状には、法第二十七条第三項に規定する事項のほか、職務従事予定期間(同条第一項に規定する職務従事予定期間をいう。)を記載しなければならない。

(呼出状の発送時期)
第十九条 裁判所は、裁判員候補者を呼び出すときは、特段の事情のない限り、裁判員等選任手続の期日の六週間前までに呼出状を発送するようにしなければならない。

(呼出しの猶予期間・法第二十七条)
第二十条 裁判員等選任手続の期日と裁判員候補者に対する呼出状の送達との間には、少なくとも二週間の猶予を置かなければならない。

(裁判員等選任手続の期日の変更)
第二十一条 裁判所は、検察官若しくは弁護人の請求により又は職権で、裁判員等選任手続の期日を変更することができる。
2 検察官及び弁護人は、裁判員等選任手続の期日の変更を必要とする事由が生じたときは、直ちに、裁判所に対し、その事由及びそれが継続する見込みの期間を具体的に明らかにし、かつ、診断書その他の資料によりこれを疎明して、期日の変更を請求しなければならない。
3 裁判所は、前項の事由をやむを得ないものと認める場合のほかは、同項の請求を却下しなければならない。
4 裁判所は、やむを得ないと認める場合のほかは、裁判員等選任手続の期日を変更することができない。
5 裁判員等選任手続の期日を変更するについては、あらかじめ、職権でこれをする場合には検察官及び弁護人の意見を、請求によりこれをする場合には相手方の意見を聴かなければならない。
6 裁判員等選任手続の期日の変更についての決定は、これを送達することを要しない。
7 裁判所は、裁判員等選任手続の期日を変更する決定をした場合には、呼び出した裁判員候補者にその旨を通知しなければならない。

(質問票の記載事項・法第三十条)
第二十二条 裁判員候補者に対する質問票には、法第三十条第一項に規定する判断に必要な質問、質問票を返送し、又は持参しなければならない旨及びその期限並びに質問票に虚偽の記載をしてはならない旨のほか、質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出したときは罰金又は過料に処せられることがある旨を記載しなければならない。

(資料の提出の求め)
第二十三条 裁判所は、法第二十六条第三項の規定により選定された裁判員候補者について、法第三十条第一項に規定する判断をするため、裁判員候補者に対し、必要な資料の提出を求めることができる。

(裁判員等選任手続の期日における決定等の告知)
第二十四条 裁判員等選任手続の期日においてした決定又は命令は、これを検察官、被告人又は弁護人及びその他の訴訟関係人に通知しなければならない。ただし、その期日に立ち会った訴訟関係人には通知することを要しない。

(裁判員等選任手続調書の作成)
第二十五条 裁判員等選任手続の期日における手続については、裁判員等選任手続調書を作成しなければならない。

(裁判員等選任手続調書の記載要件)
第二十六条 裁判員等選任手続調書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 被告事件名及び被告人の氏名
二 裁判員等選任手続をした裁判所、年月日及び場所
三 裁判官及び裁判所書記官の官氏名
四 出席した検察官の官氏名
五 出席した被告人、弁護人及び補佐人の氏名
六 出頭した裁判員候補者の氏名
七 裁判員候補者に対する質問及びその陳述
八 裁判員候補者が質問に対する陳述を拒んだこと及びその理由
九 不選任の決定の請求その他の申立て
十 法第三十五条第一項の異議の申立て及びその理由
十一 裁判員又は補充裁判員が宣誓を拒んだこと及びその理由
十二 出頭した通訳人の氏名
十三 通訳人の尋問及び供述
十四 決定及び命令(刑事訴訟規則第二十五条第二項本文に規定する申立て、請求、尋問又は陳述に係る許可を除く。)
十五 裁判員及び補充裁判員の氏名並びに公判調書、刑事訴訟規則第三十八条の調書及び検証調書に記載されるべきこれらの者の符号
2 前項に掲げる事項以外の事項であっても、裁判員等選任手続の期日における手続中、裁判長(法第二条第三項の決定があった場合において、同項に規定する合議体が構成されるまでの間は、裁判官。次条第一項及び第四項、第二十九条第二項並びに第三十三条第一項第一号及び第二項第二号において同じ。)が訴訟関係人の請求により又は職権で記載を命じた事項は、これを裁判員等選任手続調書に記載しなければならない。

(裁判員等選任手続調書の署名押印、認印)
第二十七条 裁判員等選任手続調書には、裁判所書記官が署名押印し、裁判長が認印しなければならない。
2 裁判長に差し支えがあるときは、他の裁判官の一人が、その事由を付記して認印しなければならない。
3 法第二条第三項の決定があった場合において、裁判長(同項に規定する合議体が構成されるまでの間は、裁判官)に差し支えがあるときは、裁判所書記官が、その事由を付記して署名押印しなければならない。
4 裁判所書記官に差し支えがあるときは、裁判長が、その事由を付記して認印しなければならない。

(裁判員等選任手続調書の整理)
第二十八条 裁判員等選任手続調書は、各裁判員等選任手続の期日後速やかに、遅くとも直後の公判期日の調書の整理期限までにこれを整理しなければならない。

(裁判員等選任手続調書の記載に対する異議申立て)
第二十九条 検察官又は弁護人は、裁判員等選任手続調書の記載の正確性につき異議を申し立てることができる。
2 前項の異議の申立てがあったときは、申立ての年月日及びその要旨を調書に記載しなければならない。この場合には、裁判所書記官がその申立てについての裁判長の意見を調書に記載して署名押印し、裁判長が認印しなければならない。
3 第一項の異議の申立ては、遅くとも直後の公判期日の調書の記載の正確性についての異議の申立期間の終期までにこれをしなければならない。

(裁判員等選任手続調書の証明力)
第三十条 裁判員等選任手続の期日における手続で裁判員等選任手続調書に記載されたものは、裁判員等選任手続調書のみによってこれを証明することができる。

(不選任の決定の請求を却下する決定に対する異議の申立ての手続・法第三十五条)
第三十一条 法第三十五条第一項(法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の異議の申立てについては、刑事訴訟規則第二百七十一条及び第二百七十二条の規定を準用する。
2 法第三十五条第一項の異議の申立てについての決定は、これを検察官及び被告人又は弁護人に通知しなければならない。
3 法第三十五条第一項の異議の申立てを受けた地方裁判所が不選任の決定をしたときは、その旨を当該異議の申立てに係る裁判員候補者に通知しなければならない。

(理由を示さない不選任の請求の順序・法第三十六条)
第三十二条 裁判所は、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求(法第三十六条第一項に規定する理由を示さない不選任の請求をいう。以下同じ。)をするに当たっては、検察官及び被告人に対し、交互にそれぞれ一人の裁判員候補者について理由を示さない不選任の請求をする機会を与えるものとする。
2 検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をした場合には、相手方に対し、理由を示さない不選任の請求をした裁判員候補者を知る機会を与えなければならない。
3 裁判所は、まず検察官に対し、理由を示さない不選任の請求をする機会を与えるものとする。
4 裁判所は、被告人が数人ある場合において、被告人に対し理由を示さない不選任の請求をする機会を与えるときは、あらかじめ定めた順序に従うものとする。
5 検察官及び被告人は、理由を示さない不選任の請求をする機会が与えられた場合において、理由を示さない不選任の請求をしなかったときは、以後理由を示さない不選任の請求をすることができない。

(裁判員及び補充裁判員の選任方法・法第三十七条)
第三十三条 裁判所は、裁判員及び補充裁判員を選任する決定をするに当たっては、次の順序に従って裁判員等選任手続を行うものとする。
一 裁判長は、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者のうち、質問をする必要があるすべての裁判員候補者に対し質問をする。ただし、裁判所は、法第三十四条第四項又は第七項(これらの規定を法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により不選任の決定をしなければならない裁判員候補者について、質問をする必要があるすべての裁判員候補者に対する質問を終えるまで不選任の決定をしないことが相当でないと認めるときは、その質問を終える前に不選任の決定をすることができる。
二 裁判所は、質問をした裁判員候補者のうち、法第三十四条第四項又は第七項の規定により不選任の決定をしなければならない裁判員候補者について不選任の決定をする。
三 検察官及び被告人は、法第三十四条第四項又は第七項の規定により不選任の決定がされなかった裁判員候補者について、理由を示さない不選任の請求をする。ただし、これらの規定により不選任の決定がされなかった裁判員候補者の員数が、選任すべき裁判員及び補充裁判員の員数並びに検察官及び被告人がそれぞれ理由を示さない不選任の請求をすることができる員数の合計数を超えるときは、あらかじめ、裁判所が、その裁判員候補者の中から、くじで、その合計数の裁判員候補者を選定することができるものとし、検察官及び被告人は、選定された裁判員候補者について、理由を示さない不選任の請求をする。
四 裁判所は、不選任の決定がされなかった裁判員候補者(前号ただし書に規定する場合にあっては、同号ただし書の規定により選定された裁判員候補者のうち理由を示さない不選任の請求による不選任の決定がされなかった裁判員候補者。次号において同じ。)から、くじで、法第三十七条第一項(法第三十八条第二項において読み替えて準用する場合を含む。次項第五号において同じ。)に規定する員数の裁判員を選任する決定をする。ただし、当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数の裁判員を選任する決定をする。
五 裁判所は、補充裁判員を置くときは、その余の不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、くじで、法第三十七条第二項(法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。次項第六号において同じ。)に規定する員数の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序を定めて選任する決定をする。ただし、当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序をくじで定めて選任する決定をする。
2 裁判所は、裁判員候補者の出頭状況及び質問票の記載状況等に照らし、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者のうち質問をする必要があるすべての裁判員候補者に対し質問をすることが、迅速に裁判員等選任手続を終えるために相当でないと認める場合には、裁判員等選任手続の期日のはじめに、次の順序に従って裁判員等選任手続を行う決定をすることができる。
一 裁判所は、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者について、くじで、裁判員及び補充裁判員に選任されるべき順序を定める。
二 裁判長は、前号の順序に従い、質問をする必要がある裁判員候補者に対し質問をする。
三 裁判所は、前号の規定により裁判員候補者が質問を受けるごとに、法第三十四条第四項又は第七項の規定により不選任の決定をしなければならないかどうかを判断し、不選任の決定をしなければならない裁判員候補者については不選任の決定をする。
四 検察官及び被告人は、質問を受け、かつ、前号の不選任の決定がされなかった裁判員候補者の員数が、選任すべき裁判員及び補充裁判員の員数並びに検察官及び被告人がそれぞれ理由を示さない不選任の請求をすることができる員数の合計数に満ちたときは、質問を受け、かつ、同号の不選任の決定がされなかった裁判員候補者について、理由を示さない不選任の請求をする。ただし、質問をする必要があるすべての裁判員候補者に対し質問をした場合は、その合計数に満たないときであっても、検察官及び被告人は、同号の不選任の決定がされなかった裁判員候補者について、理由を示さない不選任の請求をする。
五 裁判所は、質問を受け、かつ、不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、第一号の順序に従い、法第三十七条第一項に規定する員数の裁判員を選任する決定をする。ただし、当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数の裁判員を選任する決定をする。
六 裁判所は、補充裁判員を置くときは、質問を受け、かつ、不選任の決定がされなかったその余の裁判員候補者から、第一号の順序に従い、法第三十七条第二項に規定する員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序を定めて選任する決定をする。
3 裁判所は、裁判員候補者の出頭状況及び質問票の記載状況等に照らし、法第三十七条第三項(法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定により不選任の決定がされる裁判員候補者が存すると見込まれる場合には、裁判員等選任手続の期日のはじめに、くじで、質問を受けるべき裁判員候補者を決めることができる。

(裁判員及び補充裁判員に対する説明・法第三十九条)
第三十四条 裁判長は、裁判員及び補充裁判員に対し、その権限及び義務のほか、事実の認定は証拠によること、被告事件について犯罪の証明をすべき者及び事実の認定に必要な証明の程度について説明する。

(宣誓の方式・法第三十九条)
第三十五条 宣誓は、宣誓書によりこれをしなければならない。
2 宣誓書には、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨を記載しなければならない。
3 裁判長は、裁判員及び補充裁判員に宣誓書を朗読させ、かつ、これに署名押印させなければならない。裁判員及び補充裁判員が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 宣誓は、起立して厳粛にこれを行わなければならない。
5 宣誓は、各別にこれをさせなければならない。

第三節 解任
(裁判員又は補充裁判員の解任についての意見の聴取・法第四十一条等)
第三十六条 法第四十一条第一項の請求についての決定をするには、あらかじめ、相手方又はその弁護人の意見を聴かなければならない。
2 法第四十三条第一項又は第三項の規定による決定をするには、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

(裁判員又は補充裁判員を解任する決定の告知・法第四十一条等)
第三十七条 裁判員又は補充裁判員を解任する決定は、これを当該裁判員又は補充裁判員に通知しなければならない。

(解任の請求を却下する決定に対する異議の申立ての手続・法第四十二条)
第三十八条 法第四十二条第一項の異議の申立てについては、刑事訴訟規則第二百七十一条及び第二百七十二条の規定を準用する。
2 法第四十二条第一項の異議の申立てについての決定は、これを検察官及び被告人又は弁護人に通知しなければならない。

第三章 裁判員の参加する裁判の手続
第一節 公判準備及び公判手続
(第一回の公判期日前の鑑定についての意見の聴取・法第五十条)
第三十九条 鑑定手続実施決定(法第五十条第一項に規定する鑑定手続実施決定をいう。以下同じ。)又は同項の請求を却下する決定をするには、あらかじめ、職権でこれをする場合には検察官及び被告人又は弁護人の意見を、請求によりこれをする場合には相手方又はその弁護人の意見を聴かなければならない。

(立証及び弁論における配慮)
第四十条 検察官及び弁護人は、裁判員が審理の内容を踏まえて自らの意見を形成できるよう、裁判員に分かりやすい立証及び弁論を行うように努めなければならない。

第二節 刑事訴訟規則の適用に関する特例
(刑事訴訟規則の適用に関する特例)
第四十一条 法第二条第一項の合議体で事件が取り扱われる場合における刑事訴訟規則の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同規則の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。

第百六条第一項 裁判官 裁判官又は裁判官及び裁判員
第百六十六条ただし書 裁判官 裁判官又は裁判員
第百七十八条の十第二項、第百八十七条の三第三項、第二百十七条の十一(第二百十七条の二十七において準用する場合を含む。) 合議体の構成員 合議体の構成員である裁判官
第百九十九条の八、第百九十九条の九 裁判長又は陪席の裁判官 裁判長、陪席の裁判官又は裁判員

(証人等の尋問調書及び検証調書)
第四十二条 刑事訴訟規則第三十八条の調書及び検証調書には、立ち会った裁判員及び補充裁判員の氏名の記載に代えて、これらの者の第二十六条第一項第十五号の符号を記載するものとする。

(公判調書)
第四十三条 裁判員又は補充裁判員が立ち会った公判期日の公判調書には、刑事訴訟規則第四十四条に規定する事項のほか、立ち会った裁判員及び補充裁判員の第二十六条第一項第十五号の符号を記載しなければならない。

(鑑定手続実施決定があった場合の公判前整理手続調書)
第四十四条 鑑定手続実施決定があった場合には、公判前整理手続調書には刑事訴訟規則第二百十七条の十四に規定する事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 出頭した鑑定人の氏名
二 鑑定人の尋問及び供述

第四章 評議
(評議における配慮)
第四十五条 構成裁判官(法第六条第一項に規定する構成裁判官をいう。)は、評議において、裁判員から審理の内容を踏まえて各自の意見が述べられ、合議体の構成員の間で、充実した意見交換が行われるように配慮しなければならない。

(弁論終結前の評議)
第四十六条 裁判長は、弁論終結前に評議を行うに当たっては、あらかじめ、裁判員に対し、法第六条第一項に規定する裁判員の関与する判断は、弁論終結後に行うべきものであることを説明するものとする。

第五章 裁判員等の保護のための措置
(裁判員の選任及び解任等に関する書類の謄写)
第四十七条 法第三十一条第二項に規定する書類のほか、法第二章第二節及び第三節に規定する手続に関する書類(第十二条第三項及び第十五条第二項に規定するものを除く。)のうち、法第三十四条第一項(法第三十八条第二項及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による質問及びこれに対する陳述並びに裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者又はこれらであった者の個人を特定するに足りる情報が記載されている部分は、謄写することができない。
2 前項に規定するもののほか、裁判員、補充裁判員又は裁判員候補者からの申立てに関する書類は、謄写することができない。

第六章 補則
(検察官及び弁護人の訴訟遅延行為に対する処置)
第四十八条 刑事訴訟規則第三百三条の規定は、検察官又は弁護人が訴訟手続に関する法律又は裁判所の規則に違反し、裁判員等選任手続の迅速な進行を妨げた場合について準用する。

附則
(施行期日)
1 この規則は、法の施行の日から施行する。ただし、第二条、第十一条から第十三条まで、第十五条及び第四十七条の規定は、法附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日から施行する。

(裁判所の非常勤職員の政治的行為制限の特例に関する規則の一部改正)
2 裁判所の非常勤職員の政治的行為制限の特例に関する規則(昭和二十七年最高裁判所規則第二十五号)の一部を次のように改正する。
本則中第十一号を第十二号とし、第一号から第十号までを一号ずつ繰り下げ、本則に第一号として次の一号を加える。
一 裁判員及び補充裁判員

(政治資金規正法第二十二条の九第一項第二号の非常勤職員の範囲を定める規則の一部改正)
3 政治資金規正法第二十二条の九第一項第二号の非常勤職員の範囲を定める規則(平成四年最高裁判所規則第十三号)の一部を次のように改正する。
本則中第十号を第十一号とし、第一号から第九号までを一号ずつ繰り下げ、本則に第一号として次の一号を加える。
一 裁判員及び補充裁判員

別表(第二条関係)
(以下略)

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2007年07月03日

与謝野晶子の評論ー何故の出兵かー

yosano.jpgsakai.jpg
 堺市に行った時の写真です。駅近くの水路上の橋には、宣教師が遠くを見渡している像がありました。与謝野晶子の生家の駿河屋(菓子屋)は今は道路になっていますが、跡地に石碑と洋装の晶子の写真がありました。洋服姿は珍しいのでカメラに収めてきました。
 与謝野晶子といえば、弟籌三郎が日露戦争に出征するのに際して「君死にたまふことなかれ」を詠んだことが有名ですが、晩年は満州国成立を肯定したり、第二次大戦時には「大東亜戦争」を美化する歌を詠んだ事もまた事実です。その彼女の戦争観が顕れていると思われる評論を青空文庫(リンクはここをクリック)で読みましたので、以下にそれを引用します。シベリア出兵時にものされたもののようです。

何故の出兵か
与謝野晶子
日本人の上に今や一つの大問題が起っております。近頃の新聞を読む人の誰も気が附く通り、それは西伯利亜(シベリヤ)へ日本の大兵を出すか出さないかという問題です。
 これに対して我々婦人はどういう意見を持つでしょうか。習慣として、我国の婦人はとかくこういう大問題を眼中に置きません。女は家庭に終始する者として、公の事は男子の意見に任せていました。けれども今は、男女の別なく人として十全に生きるために、一切を知り、一切を享楽する敏感が必要であると共に、一切を正確に認識して、それの価値を批判する理性が必要である時代となりました。人は個人として、国民として、世界の人類として、生存しかつ発展するために、平等に思索し、平等に意見を述べ、平等に行動するの自由を持つようになりました。婦人なるが故にわざとこういう問題に目を閉じているようなことがあれば、それは国民としての権利を行使する義務を怠(おこた)ったもので、新しい国民道徳からいえば罪悪の一種に当ります。
 私はこの問題について自分だけの感想を述べようと思います。
 先ず私の戦争観を述べます。「兵は凶器なり」という支那の古諺(こげん)にも、戦争を以て「正義人道を亡す暴力なり」とするトルストイの抗議にも私は無条件に同意する者です。独逸(ドイツ)流の教育を受けた官僚的学者にはこれを以て空想的戦争観とする人ばかりのようですが、一人福田徳三(ふくだとくぞう)博士は「これを個人の間において言うも、相互間の親密を増進し、意志の疏通(そつう)を計るがために、先ず人を殴打するということのあるべき道理は決してない。国際間においても干戈(かんか)を以て立つということは、既に平和の破壊であって、正義人道とは全く矛盾した行動である。それ故に如何なる口実の下においても、戦争たる以上は正義人道の上から見ると変則であるといわねばならぬ。実に戦争その物が正義人道を実現するものでないことは多言するまでもない」と本月の『太陽』で述べられたのが光輝を放って私の眼に映じます。私は福田博士と全く同じ考えを戦争の上に持っております。
 それなら、性急に軍備の即時撤廃を望むかというと、私はそれの行われがたいことを予見します。内政のためでなくて、今日のように国際のために設けられた軍備は、露西亜(ロシヤ)のレニン一派の政府のように極端な無抵抗主義に殉じるの愚を演じない限り、一国だけが単独に撤廃されるものではありません。それは列国の合意の下で円滑に実行される日に向って期待すべきことで、今からその日の到来を早くすることに努力するのが自然の順序だと思います。
 私は遺憾ながら或程度の軍備保存はやむをえないことだと思います。国内の秩序を衛(まも)るために巡査の必要があるように、国際の平和と通商上の利権とを自衛するために国家としては軍備を或程度まで必要とします。これは決して永久のことでなく、列国が同時に軍備を撤廃し得る事情に達する日までの必要において変則的に保存されるばかりです。その「或程度」というのはあくまでも「自衛」の範囲を越えないことを意味します。それを越ゆれば軍国主義や侵略主義のための軍備に堕落することになります。私は日本の軍備が夙(つと)にこの程度を甚だしく越えていることを恐ろしく思っております。
 さて我国は何のために出兵するのでしょうか。秘密主義の軍閥政府は出兵についてまだ今日まで一言も口外しませんから、私たちは外国電報と在野の出兵論者の議論とに由って想像する外ありませんが、政府に出兵の意志の十分にあることは、干渉好きの政府が出兵論者の極端な議論を抑制しない上に、議会において出兵の無用を少しも明言しないので解ります。
 英仏が我国に出兵を強要して、露西亜の反過激派を救援し、少くも莫斯科(モスクワ)以東の地を独逸勢力の東漸から独立させたい希望のあることは明かですが、これは日本軍が自衛の範囲を越えて露西亜の護衛兵となるのですから、名義は立派なようでも断じて応じることの出来ない問題です。露国は露人自身が衛るべきものだと思います。露人に全く、自衛の力がないとは思われません。それに果して独逸の勢力が東漸するか、露国の反過激派が日本に信頼するかも疑問です。
 今一つの出兵理由は、西比利亜(シベリヤ)に独逸の勢力が及ばない先に、出兵に由って予めそれを防ぐことは、西比利亜に接近している我国が独逸から受ける脅威に対して取る積極的自衛策であるという説です。これが補説としては、西比利亜に渋滞している日本の貨物の莫大な量を独逸へ転送されない前に抑留せねばならないといい、また西比利亜にある七、八万の独逸俘虜(ふりょ)が既に武装しつつあることの危険を報じます。
 しかし私たち国民は決してこのような「積極的自衛策」の口実に眩惑(げんわく)されてはなりません。西部戦場での決戦さえまだ手を附けない独逸が、連合軍側が口穢(くちぎたな)く言い過ぎるように如何に狂暴であるにしても、その武力を割(さ)いて西比利亜に及ぼし、兼ねて日本を脅威しようとは想像されません。我国の参戦程度を手温(てぬる)しとする英仏は、種々の註文を出して日本を戦争の災禍の中心に引入れたいために、独逸勢力の東漸を法外に誇大するでしょうが、日本人はそれを軽信してはならないと思います。
 西比利亜出兵は恐らく独軍と接戦することはないでしょうから、殺人行為を繁くするには到らないでしょうが、無意義な出兵のために、露人を初め米国から(後には英仏からも)日本の領土的野心を猜疑(さいぎ)され、嫉視され、その上数年にわたって撤兵することが出来ずに、戦費のために再び莫大の外債を負い、戦後にわたって今に幾倍する国内の生活難を激成するならば、積極的自衛策どころか、かえって国民を自滅の危殆(きたい)に陥らしめる結果となるでしょう。
 以上は紙数の制限のために甚だ簡略な説明になりましたが、この理由から私は出兵に対してあくまでも反対しようと思っております。(一九一八年三月)

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