2007年04月30日

損害賠償命令(附帯私訴)について

 前回の記事で、現在衆議院に議案が提出されている被害者参加について取り上げたが、この法案のもう一つの大きなテーマである損害賠償命令について今日は取り上げる。なお、被害者参加・損害賠償命令などのいわゆる「被害者権利保護立法」については、刑事手続の根幹にかかわる大きな問題を含んでいると考えるので、今後も動向を追っていくつもりである。

 損害賠償命令については、マスコミ報道等では「附帯(付帯)私訴」と表記されているが、日本の旧刑事訴訟法やドイツなどで認められている「付帯私訴」は、刑事公判において犯罪被害を受けたと主張する者が民事上の請求権行使のために刑事公判において損害賠償請求権に関する主張・立証を行う当事者として登場するというシステムである。
 「損害賠償命令」については、あくまでも刑事公判で有罪判決が出された後に有罪判決をした刑事裁判所が簡易な手続によって損害賠償請求についての審理(原則として非公開の審尋)を行って、賠償命令を出すというシステムなので、これを「付帯私訴」というのは不適切と思われる。
 とりあえず、今のところ私が問題となりうると考える点について指摘させていただく。

・犯罪被害者が2千円の手数料で損害賠償請求をできるというシ ステムを評価する向きもあるようだが、これについては「民事 訴訟費用等に関する法律」を改正して、通常の民事訴訟で犯罪 被害者が不法行為に基づく損害賠償請求を行う場合の手数料額 の特例を作ることで対応できるのではないか(私見では、濫訴 に対する予防措置さえできていれば、手数料を無料にしても問 題はないと考える)。

・刑事公判を担当した刑事裁判官が損害賠償命令を出すことにな っているが、これについて通常の民事訴訟で賠償が認められる 場合よりも賠償額が不当に過大になることはないであろうか? また、交通事件などで被害者側にも過失があるような場合に  は、刑事裁判官が過失相殺などの調整を行うのには慣れていな いのではないか(交通事件については、通常大都市では交通事 件の民事部があり、専属の裁判官が審判を行っている)

・犯罪被害者の方の中には、特に刑事被告人が刑事公判で事実を 争っているような場合、刑事判決が確定した後に損害賠償請求 を行うことを考えておられる方も少なくないであろう。そのよ うな方が刑事判決確定後に賠償命令制度を利用できるようなシ ステムにはなっていない。
 
・何よりも、賠償命令・民事の損害賠償についての判決が出て 
 も、行為者に資力がなければ判決は画に描いた餅である。損害 賠償については行為者に資力がない場合には、国が支払って、 後から国が行為者に対して求償できるようなシステムが必要で あろう。

以下、法案中「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の部分中損害賠償命令に関する部分を引用する。
(損害賠償命令事件に関する手続の手数料等)

 第二十八条 損害賠償命令の申立てをするには、二千円の手数料を納めなければならない。

 2 民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一七の項の規定は、第十九条第一項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。

 3 損害賠償命令の申立てをした者は、第二十条第一項(第二十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、第三条第一項及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。

 4 前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。

  第七条中「第四条」を「第五条」に改め、同条を第八条とし、同条の次に次の一章及び章名を加える。

    第五章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例

     第一節 損害賠償命令の申立て等

  (損害賠償命令の申立て)

 第九条 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。

  一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪

  二 次に掲げる罪又はその未遂罪

   イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条から第百七十八条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪

   ロ 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪

   ハ 刑法第二百二十四条から第二百二十七条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪

   ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)

 2 損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。

  一 当事者及び法定代理人

  二 請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実

 3 前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。

  (申立書の送達)

 第十条 裁判所は、前条第二項の書面の提出を受けたときは、第十三条第一項第一号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。

  (管轄に関する決定の効力)

 第十一条 刑事被告事件について刑事訴訟法第七条、第八条、第十一条第二項若しくは第十九条第一項の決定又は同法第十七条若しくは第十八条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理及び裁判を行う。

  (終局裁判の告知があるまでの取扱い)

 第十二条 損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄及び認諾並びに和解(第五条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く。)のための手続を含む。)及び裁判(次条第一項第一号又は第二号の規定によるものを除く。)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。

 2 裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。

  (申立ての却下)

 第十三条 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。

  一 損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回又は変更されたため、当該被告事件が第九条第一項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く。)。

  二 刑事訴訟法第四条、第五条又は第十条第二項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。

  三 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条若しくは第三百三十六条から第三百三十八条までの判決若しくは同法第三百三十九条の決定又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の決定があったとき。

  四 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当しないとき。

 2 前項第一号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 3 前項の規定による場合のほか、第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

  (時効の中断)

 第十四条 損害賠償命令の申立ては、前条第一項の決定(同項第一号に該当することを理由とするものを除く。)の告知を受けたときは、当該告知を受けた時から六月以内に、その申立てに係る請求について、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

     第二節 審理及び裁判等

  (任意的口頭弁論)

 第十五条 損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 2 前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。

  (審理)

 第十六条 刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。

 2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。

 3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。

 4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。

  (審理の終結)

 第十七条 裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。

  (損害賠償命令)

 第十八条 損害賠償命令の申立てについての裁判(第十三条第一項の決定を除く。以下この条から第二十条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。

  一 主文

  二 請求の趣旨及び当事者の主張の要旨

  三 理由の要旨

  四 審理の終結の日

  五 当事者及び法定代理人

  六 裁判所

 2 損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。

 3 第一項の決定書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。

 4 裁判所は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。

 5 裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第一項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。

     第三節 異議等

  (異議の申立て等)

 第十九条 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。

 2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。

 3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。

 5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。

 6 民事訴訟法第三百五十八条及び第三百六十条の規定は、第一項の異議について準用する。

  (訴え提起の擬制等)

 第二十条 損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第九条第二項の書面を訴状と、第十条の規定による送達を訴状の送達とみなす。

 2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

 3 第一項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。

 4 前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

  (記録の送付等)

 第二十一条 前条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第十六条第四項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。

 2 裁判所書記官は、前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く。)を送付しなければならない。

  (異議後の民事訴訟手続における書証の申出の特例)

 第二十二条 第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第二項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第二百十九条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。

  (異議後の判決)

 第二十三条 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。

 2 前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。

 3 民事訴訟法第三百六十三条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。この場合において、同法第三百六十三条第一項中「異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、「損害賠償命令」と読み替えるものとする。

     第四節 民事訴訟手続への移行

 第二十四条 裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第十六条第三項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。

 2 次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。

  一 刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。

  二 損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。

 3 前二項の決定及び第一項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 4 第二十条から第二十二条までの規定は、第一項又は第二項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。

     第五節 補則

  (損害賠償命令事件の記録の閲覧等)

 第二十五条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

 2 前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

 3 前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。

 4 裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。

 5 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれの有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。

 6 損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、当該記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。

 7 第四項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 8 第五項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。

  (民事訴訟法の準用)

 第二十六条 特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条、第十四条、第一編第二章第二節、第三章(第四十七条から第五十一条までを除く。)、第四章、第五章(第八十七条、第九十一条、第二節第二款、第百十六条及び第百十八条を除く。)、第六章及び第七章、第二編第一章(第百三十三条、第百三十四条、第百三十七条第二項及び第三項、第百三十八条第一項、第百三十九条、第百四十条、第百四十五条並びに第百四十六条を除く。)、第三章(第百五十六条の二、第百五十七条の二、第百五十八条、第百五十九条第三項、第百六十一条第三項及び第三節を除く。)、第四章(第二百三十五条第一項ただし書及び第二百三十六条を除く。)、第五章(第二百四十九条から第二百五十五条まで並びに第二百五十九条第一項及び第二項を除く。)及び第六章(第二百六十二条第二項、第二百六十三条及び第二百六十六条第二項を除く。)、第三編第三章、第四編並びに第八編(第四百三条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までを除く。)の規定を準用する。
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2007年04月29日

「犯罪被害者と司法を考えるシンポジウム」

m@@eX?.jpg写真は大阪弁護士会館内部の法律相談案内板。この建物の中でシンポジウムが行われた。案内板には法テラスの案内も書かれているが、犯罪被害者支援の国選弁護士制度も法テラスなどによって充実することが望まれるのではないだろうか(もっとも、その支援の内容が問題となることは以下に記した通り)。

 現在、衆議院に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が上程されている。
 しかしその中で刑事司法制度の根幹にかかわる改正として、被害者の訴訟参加制度が盛り込まれている(他に、損害賠償命令、民事訴訟におけるビデオリンク措置、犯罪被害者の事件記録の閲覧・謄写の範囲の拡大なども盛り込まれているが、ここでは割愛する)。

 この「被害者の訴訟参加」とは、故意の犯罪行為によって死傷に至らしめた罪・強制わいせつ・強姦・人身売買などの一定の重罪事件について、被害者や遺族(あるいはこれらの者の代理人弁護士)が法定で検察官とともに当事者として訴訟に参加し、被告人質問や情状立証に関する証人尋問・求刑に相当する意見を陳述することができるというものである。

 この訴訟参加制度に関しては、刑事司法の根幹にかかわる問題が多く含まれているが、被害者団体からも批判の声が挙がっており、先週犯罪被害者や学者などから構成されている「被害者と司法を考える会」より、国会に対して廃案とするようにとする要望書が提出されている。

 昨日、大阪弁護士会で開かれた「犯罪被害者と司法を考えるシンポジウム」に参加したが、この制度に対して4人のパネリスト(「被害者と司法を考える会」代表・法科大学院刑訴法担当教授、被害者支援にたずさわる心理学者・刑事弁護の経験の深い弁護士)から以下のような意見が述べられていた(以下は私の要約)。

・一部の被害者しか使えない制度である。被告人と対峙する当事者となることによって二次被害をうけることになりかねない。事件記録に対する被害者の情報アクセスが現状では十分に行えていない状況である。法廷が復讐の場になりかねない。綿密な証拠の積み重ねで判断することに慣れていない裁判員の事実認定に影響を与えかねない。

・私訴制度を設けているフランスでは、被害者が私訴原告人として刑事裁判の当事者となることができるが、私訴原告人はあくまでも損害賠償請求を訴求するという建前である。被害者が当事者として刑罰を要求するという制度は、私的復讐を禁じている近代刑事裁判の枠組とは合致しない。被害者が法廷で行われることを知りたいのは当然であるが、当事者として関与するというのは別問題である。

・被害者に対する継続的な支援が必要。被害者参加については、参加したくない人もいる。参加の方法・度合いについて様々なオプションを設けないと関われない人を切り捨ててしまうような制度になりかねないのではないか。

・正当防衛の成否・責任能力の有無、被害者の重大な過失などが問題になるケースでは、被害者が敵対的な形で当事者として出てくると、従来の形とはことなった弁護方針とならざるをえない。 争うべき争点を絞った上で書証を不同意にして争うべきところを、全て不同意にして全面的に争うか、あるいはただただ許しを乞うだけになりかねない。被告人が被害者参加人の前では言いたいことが言えなくなりかねない。
 
 私は、このような制度がもし実現することになれば、事実認定と量刑手続とが分けられていない現在の刑訴法のもとでは、事実上被害者参加人の訴訟活動が事実認定に大きく影響することになりかねないと考える。
 裁判員への影響だけでなく、職業裁判官に対する影響も考えられるのではないか(職業裁判官も人の子であり、感情を有する存在であることは裁判員とかわりがないであろう)。
 たとえば、有罪の結論を出したい職業裁判官が、評議の場で情に訴えるような裁判員に対する説得を行ったり、同時に損害賠償命令制度が導入されることを前提にすれば、賠償命令での賠償金額が通常の民事訴訟における賠償額よりも過大な額になるなどの問題も生ずるのではないか。
 何よりも、「もし被告人が無実だったら、どうするのだろう」との疑問が生ずる。犯罪被害者は多大な労力・費用を費やして訴訟活動を行い、場合によっては被告人との対峙によって二次被害を受けることになろう。この場合、被告人も防御について多大な負担を強いられるであろう。結果として無実の人に対して訴訟参加を行っていたのであれば、一体だれがどのように責任を取るのであろうか。社会制度の問題であるから、「自己責任」では済まされない問題である。
 
 なお、「被害者と司法を考える会」(ここをクリック)のサイトに、被害者参加制度に関する同会の見解が掲載されている。「急がないで」「我々が本当に求めるのは、きちんとした制度設計です」とする同会の見解に私は基本的に賛同するものである。

 法案のうち、被害者参加に関する規定を以下に抜粋する。
第三節 被害者参加
 第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
  一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条    第一項、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二    十七条までの罪
  三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯    罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
  四 前三号に掲げる罪の未遂罪
 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。

 第三百十六条の三十四 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。

   公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。

   裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。

   裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる。

   前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。

 第三百十六条の三十五 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。

 第三百十六条の三十六 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。

   前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項から第三項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。

 第三百十六条の三十七 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。

   前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。

 第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。

   前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

   裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。

   第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。

 第三百十六条の三十九 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる。

   前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。

   裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたときその他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

   裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で、被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

   裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

  第三百五十条の八中「第二百九十一条第二項」を「第二百九十一条第三項」に改める。

 
追記:「被害者と司法を考える会」サイト(ここをクリック)に本ブログからのリンクを許可してくださった同会代表の方に感謝します。
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2007年04月22日

少年法第二次改正法案、衆議院を通過

V.jpg
 写真は片平丁の交差点より眺めた仙台家庭裁判所新庁舎。手前の交差点の前にある建物は消防署で、その奥の建物が家庭裁判所である。
 
 少年法の第二次改正法案が19日に衆議院を通過して参議院に回付されたようである。与党・民主党双方より修正案が出されたが、与党側の修正案が可決されたようである。
修正の概要は、前回の記事でも触れた警察調査権の対象が「虞犯少年」をのぞき、「触法少年」に限られた点と、保護観察中の少年に対する保護処分の要件が「警告」を受けた後になお改善の見込みがない場合に限定が付された点などである。しかしこれらの修正がなされても、なお警察調査権に関する問題や少年側の防御権などについて抜本的な転換があったとはいえないであろう。少なくとも警察調査権に関しては家裁が第一次的な調査機関であるという位置づけが必要であると考える。そもそも触法少年に対してなぜ家裁でなく警察による強制調査権が必要であるのかという点についても十分な説明がなされているとはいいがたいであろう。また、14歳未満の少年に対する少年院送致の要件も、「特に必要と認める場合」というように漠然とした規定になっているが、これについては実質的な限定となるような規定にする必要があると思われる。

 修正後、回付された法案は以下の通りである。

第一六四回
閣第四四号

   少年法等の一部を改正する法律案

 (少年法の一部改正)

第一条 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)の一部を次のように改正する。
目次を削り、題名の次に次の目次を付する。

 目次

  第一章 総則(第一条・第二条)

  第二章 少年の保護事件

   第一節 通則(第三条―第五条の三)

   第二節 通告、警察官の調査等(第六条―第七条)

   第三節 調査及び審判(第八条―第三十一条の二)

   第四節 抗告(第三十二条―第三十六条)

  第三章 成人の刑事事件(第三十七条―第三十九条)

  第四章 少年の刑事事件

   第一節 通則(第四十条)

   第二節 手続(第四十一条―第五十条)

   第三節 処分(第五十一条―第六十条)

  第五章 雑則(第六十一条)

  附則

第二章第二節の節名を次のように改める。

第二節 通告、警察官の調査等

第六条第三項を削り、同条の次に次の六条を加える。

  (警察官等の調査)

 第六条の二 警察官は、客観的な事情から合理的に判断して第三条第一項第二号に掲げる少年であると疑うに足りる相当の理由
のある者を発見した場合において、必要があるときは、事件について調査をすることができる。

 2 前項の調査は、少年の情操の保護に配慮しつつ事案の真相を明らかにし、もつて少年の健全な育成のための措置に資するこ
とを目的として行うものとする。

 3 警察官は、国家公安委員会規則の定めるところにより、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警
察官を除く。)に調査(第六条の五第一項の処分を除く。)をさせることができる。

  (調査における付添人)
 第六条の三 少年及び保護者は、前条第一項の調査に関し、いつでも、弁護士である付添人を選任することができる。

(呼出し、質問、報告の要求)
 第六条の四 警察官は、調査をするについて必要があるときは、少年、保護者又は参考人を呼び出し、質問することができる。

 2 前項の質問に当たつては、強制にわたることがあつてはならない。
 
 3 警察官は、調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

  (押収、捜索、検証、鑑定嘱託)

 第六条の五 警察官は、第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件の調査をするについて必要があるときは、押収、捜索、検
証又は鑑定の嘱託をすることができる。

 2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中、司法警察職員の行う押収、捜索、検証及び鑑定の嘱託に関する規定(同
法第二百二十四条を除く。)は、前項の場合に、これを準用する。この場合において、これらの規定中「司法警察員」とあるのは「司法警察員たる警察官」と、「司法巡査」とあるのは「司法巡査たる警察官」と読み替えるほか、同法第四百九十九条第一項中「検察官」とあるのは「警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長」と、「政令」とあるのは「国家公安委員会規則」と、同条第二項中「国庫」とあるのは「当該都道府県警察又は警察署の属する都道府県」と読み替えるものとする。

  (警察官の送致等)

 第六条の六 警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長
に送致しなければならない。

  一 第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が第二十二条の二第一項各号に掲げる罪に係る刑
罰法令に触れるものであると思料するとき。

  二 前号に掲げるもののほか、第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当
であると思料するとき。


 2 警察官は、前項の規定により児童相談所長に送致した事件について、児童福祉法第二十七条第一項第四号の措置がとられた
場合において、証拠物があるときは、これを家庭裁判所に送付しなければならない。

 3 警察官は、第一項の規定により事件を送致した場合を除き、児童福祉法第二十五条の規定により調査に係る少年を児童相談所に通告するときは、国家公安委員会規則の定めるところにより、児童相談所に対し、同法による措置をとるについて参考となる当該調査の概要及び結果を通知するものとする。

  (都道府県知事又は児童相談所長の送致)

 第六条の七 都道府県知事又は児童相談所長は、前条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により送致を受けた事件については、児童福祉法第二十七条第一項第四号の措置をとらなければならない。ただし、調査の結果、その必要がないと認められるときは、この限りでない。

 2 都道府県知事又は児童相談所長は、児童福祉法の適用がある少年について、たまたま、その行動の自由を制限し、又はその
自由を奪うような強制的措置を必要とするときは、同法第三十三条及び第四十七条の規定により認められる場合を除き、これを家
庭裁判所に送致しなければならない。

第三十二条の五の見出しを「(抗告審における国選付添人)」に改め、同条に次の一項を加える。

 2 抗告裁判所は、第二十二条の三第二項に規定する事件(家庭裁判所において第十七条第一項第二号の措置がとられたものに
限る。)について、少年に弁護士である付添人がなく、かつ、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮し、抗告審の審理に
弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付することができる。

第三十五条第二項中「第三十二条の三」の下に「、第三十二条の五第二項」を加える。

第二章中第三節を第四節とし、第七条の次に次の節名を付する。

第三節 調査及び審判

第八条第一項中「前二条」を「第六条第一項」に改め、「通告又は」の下に「前条第一項の」を、「司法警察員」の下に「、警察官」を加え、「同様である」を「同様とする」に改める。

第十四条第二項中「(昭和二十三年法律第百三十一号)」を削る。

第十八条第二項中「第六条第三項」を「第六条の七第二項」に、「附して」を「付して」に改める。

第二十二条の三の見出し中「検察官が関与する場合の」を削り、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 家庭裁判所は、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であつて前条第一項各号に掲げる罪のもの又は第三条第一項第
二号に掲げる少年に係る事件であつて前条第一項各号に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものについて、第十七条第一項第二号の
措置がとられており、かつ、少年に弁護士である付添人がない場合において、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮し、
審判の手続に弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付することができる。

  

第二十四条第一項に次のただし書を加える。

ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分をする
ことができる。

第二十六条の三の次に次の一条を加える。

(保護観察中の者に対する措置)

 第二十六条の四 犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第四十一条の三第二項の申請があつた場合において、家
庭裁判所は、審判の結果第二十四条第一項第一号の保護処分を受けた者がその遵守すべき事項を遵守せず、同法第四十一条の三第
一項の警告を受けたにもかかわらず、なお遵守すべき事項を遵守しなかつたと認められる事由があり、その程度が重く、かつその
保護処分によつては本人の改善及び更生を図ることができないと認めるときは、決定をもつて、第二十四条第一項第二号又は第三
号の保護処分をしなければならない。

 2 家庭裁判所は、前項の規定により二十歳以上の者に対して第二十四条第一項第三号の保護処分をするときは、その決定と同
時に、本人が二十三歳を超えない期間内において、少年院に収容する期間を定めなければならない。

 3 前項に定めるもののほか、第一項の規定による保護処分に係る事件の手続は、その性質に反しない限り、第二十四条第一項
の規定による保護処分に係る事件の手続の例による。

  第三十条第四項中「第二十二条の三第三項」を「第二十二条の三第四項」に改める。

  第三十一条第一項中「第二十二条の三第二項」を「第二十二条の三第三項」に改める。

 (少年院法の一部改正)

第二条 少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号)の一部を次のように改正する。

 第一条の次に次の一条を加える。

 第一条の二 少年院における処遇は、個々の在院者の年齢及び心身の発達程度を考慮し、その特性に応じて、これを行わなけれ

ばならない。

  第二条第二項及び第五項中「十四歳以上」を「おおむね十二歳以上」に改める」に改める。

  第十条第二項中「、第十一条及び第十二条」を「及び第十一条から第十二条の二まで」に改める。

  第十二条の次に次の一条を加える。

 第十二条の二 少年院の長は、必要があると認めるときは、少年(少年法第二条第一項に規定する少年をいう。)である在院者
の保護者(同条第二項に規定する保護者をいう。)に対し、その在院者の監護に関する責任を自覚させ、矯正教育の実効を上げる
ため、指導、助言その他の適当な措置をとることができる。

 (犯罪者予防更生法の一部改正)

第三条 犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。

  第三十六条の次に次の一条を加える。

  (保護者に対する措置)

 第三十六条の二 保護観察所の長は、必要があると認めるときは、保護観察に付されている少年(少年法第二条第一項に規定す
る少年であつて、第三十三条第一項第一号又は第二号に掲げる者に限る。)の保護者(同法第二条第二項に規定する保護者をいう
。)に対し、その少年の監護に関する責任を自覚させ、その更生に資するため、指導、助言その他の適当な措置をとることができ
る。

 第三十八条第一項中「保護観察所の長は」の下に「、法務省令で定めるところにより」を加え、「聞き、法務省令の定める範
囲内で」を「聴き、これに基づいて」に改める。

 第四十一条の二の次に次の一条を加える。

  (保護観察中の者に対する措置)

 第四十一条の三 保護観察所の長は、少年法第二十四条第一項第一号の保護処分を受けた者が、遵守すべき事項を遵守しなかつ
たと認めるときは、その者に対し、これを遵守するよう警告を発することができる。

 2 保護観察所の長は、前項の警告を受けた者が、なお遵守すべき事項を遵守せず、その程度が重いと認めるときは、少年法第
二十六条の四第一項の決定の申請をすることができる。

 (総合法律支援法の一部改正)

第四条 総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第三十九条」を「第三十九条の二」に改める。

  第五条の見出し中「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改め、同条中「以下同じ。)」の下に「及び国選付添人(少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)の規定に基づいて裁判所が少年に付する弁護士である付添人をいう。以下同じ。)」を加える。

  第三十条第一項第三号中「国の委託に基づく国選弁護人」の下に「及び国選付添人(以下「国選弁護人等」という。)」を加
え、同号イ中「国選弁護人の」を「国選弁護人等の」に、「国選弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に改め、同号
ロ中「国選弁護人に」を「国選弁護人等に」に、「国選弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に改める。

  第三十四条第二項第二号中「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改める。

  第三十六条の見出し並びに同条第一項、第二項及び第五項中「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改める。

  第三十七条(見出しを含む。)中「国選弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に改める。

  第三十八条の見出し中「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改め、同条第一項中「刑事訴訟法」の下に「又は少年法」を加え
、「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改め、同条第二項中「国選弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に、「国選
弁護人の」を「国選弁護人等の」に改め、同条第三項中「国選弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に、「国選弁護
人に」を「国選弁護人等に」に、「国選弁護人の」を「国選弁護人等の」に改める。

  第三十九条の見出し中「報酬等請求権」を「国選弁護人の報酬等請求権」に改め、同条第一項から第三項までの規定中「国選
弁護人契約弁護士」を「国選弁護人等契約弁護士」に改め、第三章第三節第一款中同条の次に次の一条を加える。

  (国選付添人の報酬等請求権の特則等)

 第三十九条の二 国選弁護人等契約弁護士が国選付添人に選任されたときは、少年法第二十二条の三第四項の規定は、適用しな
い。

 2 前項の場合においては、少年法第三十一条の規定の適用については、同条第一項に規定するもののほか、次の各号に掲げる
者が国選付添人に選任されたときは、当該国選付添人に係る当該各号に定める費用も同項の費用とする。

  一 報酬及び費用が事件ごとに定められる契約を締結している国選弁護人等契約弁護士 当該報酬及び費用

  二 前号に規定する国選弁護人等契約弁護士以外の国選弁護人等契約弁護士 少年法第二十二条の三第四項の規定の例により
裁判所がその額を定めた旅費、日当、宿泊料及び報酬

 3 裁判所は、第一項の場合において、国選付添人に係る費用の額の算定に関し、支援センターに対して必要な協力を求めるこ
とができる。

  附則第四条中「国選弁護人」を「国選弁護人等」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲
げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第四条(総合法律支援法第三十四条第二項第二号並びに第三十六条の見出し並びに同条第一項、第二項及び第五項の改正規
定に限る。)の規定 総合法律支援法附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日

 二 第一条(少年法第二十二条の三の見出し中「検察官が関与する場合の」を削り、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項
中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に一項を加える改正規定、同法第三十条第四項及び第三
十一条第一項の改正規定、同法第三十二条の五の見出しを「(抗告審における国選付添人)」に改め、同条に一項を加える改正規
定並びに同法第三十五条第二項の改正規定に限る。)及び第四条(総合法律支援法目次の改正規定、同法第三十条第一項第三号、
第三十七条、第三十八条並びに第三十九条の見出し及び同条第一項から第三項までの改正規定並びに同条の次に一条を加える改正
規定に限る。)の規定 総合法律支援法附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日


 (経過措置)

第二条 この法律の施行の際現に家庭裁判所に係属している事件についてなされる保護処分については、第一条の規定による改正
後の少年法第二十四条第一項ただし書の規定並びに第二条の規定による改正後の少年院法第二条第二項及び第五項の規定にかかわ
らず、なお従前の例による。

第三条 第一条の規定による改正後の少年法第二十六条の四の規定及び第三条の規定による改正後の犯罪者予防更生法第四十一条
の三の規定は、この法律の施行の日以後に第一条の規定による改正後の少年法第二十四条第一項第一号の保護処分の決定を受けた
者について適用する。

 (児童福祉法の一部改正)

第四条 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

  第二十六条第一項中「(昭和二十三年法律第百六十八号)」の下に「第六条の六第一項若しくは」を加える。

  第二十七条の二第一項中「少年法」の下に「第二十四条第一項又は第二十六条の四第一項の規定により同法」を加える。


     理 由

 少年非行の現状にかんがみ、これに適切に対処するため、警察官による調査手続、十四歳未満の少年の少年院送致、保護観察に
付された者が遵守すべき事項を遵守しなかった場合の措置等に関する規定を整備するとともに、裁判所の判断により国選付添人を
付する制度を新設するための所要の規定を整備する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

posted by 一法律学徒 at 03:49| Comment(4) | TrackBack(0) | 法案・立法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月20日

椿の花

.jpg
 大家さんが育てておられる椿の木に咲いている花。椿の花は花びらが少しずつ散っていくのではなく、ガクの部分から花が丸ごと落ちるようです。今年も私の目を楽しませていただきました。大家さん、どうもありがとうございます。
 庭の椿の花もだいぶ少なくなりました。今は4月の中旬ですが、椿は春の季語にもなっているので、まだまだ頑張って咲いていて欲しいと思います。ここ数日の大雨の影響もあるのでしょう、花がだいぶ茶ばんでいるものもあります。
 椿といえば、ふとアレキサンドル・デュマの小説「椿姫(La Dame aux camelias)」を想い出しました。若手弁護士のアルマンとフランス社交界に散った高級娼婦の恋を描いた小説ですが、雨に打たれて今もうすぐに落ちそうになっている花とこの小説のヒロインを著者の小デュマも重ねあわせていたのでしょうか。思わず一句詠んでしまいました。

               冷雨に身命委ねる椿姫
 
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2007年04月15日

白川郷へ行ってきました

?Hcq.jpgA.jpg 右は飛騨白川郷の合掌作り。平成13年に観光用に開放されている長瀬家(ご当主が前田家の御典医をしておられたという旧家)の茅を吹き替えたそうですが、数百人の村人とボランティアの手によって行われたようです。茅を集めるだけで大変で、静岡の御殿場の方からも持ってきているそうです(御当家の女性談)。維持するのに手がかかるので、合掌の家に住むのを諦める方も少なくないようです。左は白川郷で食べたみたらし団子。醤油だけの味付けですが団子の甘みを十分に感じることができました。
 先週末、北陸の友人宅に遊びに行きました。友人の車で飛騨の白川郷に行って、合掌作りの家屋を見てきました。囲炉裏の炭の香りと、茅の香りが入り交じって風情を醸していましたが、これを維持するには莫大な労力と人々の協力が欠かせないようです。
 昔は囲炉裏で常に火を焚いていたということもあって、煤の働きで茅が長持ちし、80年ぐらい茅葺き屋根が維持できたようですが、今は30年ぐらい毎に葺き替えているそうです。長瀬家の女性の話によれば、両屋根を葺き替えれば軽く家が建つ位の費用がかかるとか。葺き替えにあたって国から補助金も出るようですが、大変なことでしょう。
 帰りには濁酒を買って友人宅で呑みました。ツーンとする麹の匂いが爽やかで、口当たりの良い甘みを感じつつ、北陸の澄んだ空気を味わいながら眠りにつきました。

posted by 一法律学徒 at 23:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月11日

丹波焼展に行って

On~GM.jpgOgGM@].jpg(右が白丹波の赤絵大皿、左が唐津地の絵皿。左の皿の絵は梅とのことでした。「唐津地」といっても、単に荒い土を使っているだけで、丹波焼と唐津焼とは特に関係はないようです。)
 昨日の午前、大家さんにご相伴させていただいて丹波焼展に行ってきました。丹波焼は、平安時代から丹波で作られていたようですが、文献記録が残っているのは安土桃山時代ごろからだそうです。展示会のオーナーは大家さんの昔のお客さんだそうで、昔大家さんが商店街で商売をしておられた頃から、よく「丹波へ行ってくる」と話しておられたそうです。
 ハイライトは写真の赤絵大皿でした。赤というよりはえんじ色で、これはマンガンを含む柚によるものだそうです。酒を入れる甕や徳利も多く、酒好きの大家さんは「どんな酒を当時の人は呑んでいたんだろう」とつぶやいておられました。
 かなりの量のコレクションで、全部写真に撮影したら、デジカメのメモリがいっぱいになってしまいました。オーナーの古人への思い入れが伝わってきた展示会でした。
 帰りに、大家さんにお寿司と串カツをご馳走になって帰宅しました。お誘いいただいた借家人としては、感謝と感激の限りでした。

posted by 一法律学徒 at 22:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月09日

古丹波展へのおさそいを受けて

.jpg(写真は箕面焼のショーウィンドウにて。紅色が鮮やかなのが印象的であった)
 下宿の大家さんから、古丹波の焼き物の展示会があるとのお誘いを受け、明日ご相伴させていただくことになりました。関東出身の私は、陶器といえば「セトモノ」と思っている位の認識ですが、関西に来てから箕面焼という紅色が冴える焼き物にお目にかかり、思わずショーウィンドウをお店の方のお許しを得て撮影したことがありました。
 丹波焼はまだどのようなものか存じませんが、丹波といえば関西の古き良き伝統ある地のようで、どのような骨董にお目にかかるのか楽しみです。大家さんは骨董に詳しいようで、明日午前中は大家さんのガイドつきのピクニック(?)になりそうです。

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2007年04月08日

誕生日を迎えて ー世界で一番いとしき花ー

.bmp(近所の桜です。2007年の復活祭は、カトリック・東方教会とも4月8日〔本日〕だそうですが、この花も復活祭の今日が盛りのようです。20歳のハウスマンもこのような桜を眺めつつ詩を詠んだのでしょう)
 実は、私はついこの間誕生日を迎えました。また一つ年をとる
と思うと、様々な思いがよぎります。法科大学院のあるキャンパスには桜が花を咲かせ、お花見をしている学生も見かけますが、ふと高校生の時に読んだA・E・housman(ハウスマン)のLovelist of tree ー世界で一番いとしき花ー という詩を想い出しました。

Loveliest of trees,the cherry now
Is hung with bloom along the bough,
And stands about the woodland ride
Wearing white for Eastertide.

Now,of my threescore years and ten,
Twenty will not come again,
And take from seventy springs a score,
It only leaves me fifty more.

And since to look at things in bloom
Fifty springs are little room,
About the woodlands I will go
To see the cherry hung with snow

この詩の和訳を紹介しているサイトがありました。)

 20歳の青年詩人が、「我が人生70年(three score years and ten=3×20〔scoreは古語で20〕+10=70年)のうち、20年はもはやかえってくることはない」「だから私は雪のごとき桜花を見にいくのだ」と詠っているのが印象的な詩です。

 今までの人生を振り返ると、あまりにも焦って「今さえ乗り越えればよい」という時期が多かったように思います。学部時代の知りあいの女性から、「あなたは4年間、いつも鞄を小脇に抱えてこせこせと走りまわっていましたね。」「食事のスピードも早かったですね。もうちょっと、ゆっくりと味わって召し上がった方がいいですよ。そのような小さなことの積み重ねがストレスになることもありますよ。」とアドバイスを戴いたことがありました。

 「今の時期さえ頑張って乗り切って、目標を達成すれば後は何とでもなる」「目標達成のことだけを考えていればよい」そのように自分をごまかし、突っ走っていたために、心身に変調を来したこともありました。
 
 今年2月、私が敬愛する民法学者のM教授が以下のようなメッセージを法科大学院生に向けて贈っておられました。ウェブ上で公開されているものですので、長くなりますが引用します。

「結論」
物事には、結びがあります。主張には、常に結論があります。私達は、これを大切な至上のものであると考える傾向があります。

しかし、音楽を例にとれば、結びは、それほど重要でないことが分かります。バッハの曲を聴けば、和音で曲が終わっていますが、これがいわゆる結論でしょう。最近はプレデュードをよく聞いていますが、ショパンは天才的なひらめきで、結びを導きます。彼のプレデュード12番では、それを味わうことができます。また、シューベルトのピアノ曲の中には、なかなか結びができず、ながながと続くものがあります。でも考えてみれば、そのいわゆる結論にいたる過程にこそ、楽しみがあり、喜びがあり、驚きがあります。最後の和音だけでは、音楽になりません。

ヨーロッパ、特にフランスでは、伝統的に書く訓練、話す訓練をします。ここでは、対をなすバランスの中で論が進んで行くことを学び、訓練します。これは、音楽の構成とも似ています。書く中で、論を展開させ、発展させて行くことを、楽しむのです。人が何を伝えたいのかは、もとより重要ですが、どのように伝えるのかで、その人の教養と、分析力が問われて行きます。「君を愛する」だけではなく、これを伝えるのに構成が必要になり、そこに教養が求められてきます。「君たちはシラノの話を知っていますか?」

深みのある文章は、その思索の過程のなかで輝いています。そこでは、結論は、二の次になります。フランスでの博士論文作成にあたっての伝統的な指導では、結論よりも、分析の過程、深さ、構成が問われます。結論など意味がないと豪語した敬愛する教授の言葉が思い出されます。

ただひたすらスピードを要し求める社会では、結論ではなくそれに至る過程を重んじる文化のもたらす喜びを充分に味わうことができません。そこでは常に結論が最も重要であり、列挙のみの記述でも許されるのです。このような国とは、文化、伝統が異なります。このことは、フランスの料理にも当てはまります。料理や食事のすべての過程にこそ、素材や雰囲気のおりなす喜びがあり、未知に対する新しい発見があります。

君たちの毎日の平凡な営みこそ、充実させることが大切です。結論のみをもって、人生の最上の到達点としない方が、スケールが雄大であり時の流れが充実しているように思います。「君たちの人生を愛せよ!」


 今まで自分は余りにもプロセスを無視してきました。自分に自信が無かったから、結論だけを急いで得ようとしていたのでしょう。またひとつ年をとりますが、M教授のおっしゃるような、日常の事、すなわち、自分の着る事、食べる事、寝る事、書物を読む事といった、ごくささいなことから充実させていきたいと思います。ハウスマンが詠ったように、私に残された人生は確実に少なくなっている事は確かでしょうが、桜の時期に、ゆったりと周囲の景色を楽しみつつ日常という大路を歩んで行こうと思っております。今までこのような私を激励・ご叱責してくださった方々に心から感謝いたします。



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2007年04月07日

少年法第二次改正 警察調査権について

.bmp(写真は仙台家庭裁判所旧庁舎。現在は仙台地裁・高裁に隣接する場所に移転している)
 現在国会に上程されている刑事法関連法案はいずれも大きな論点を含んでいると思われる。そのうちの一つとして、少年法の第二次改正が挙げられる。少年法については、平成12年改正(第一次改正)がすでになされ、同改正によって少年審判への検察官関与、裁定合議制、原則逆送制度〔故意の致死事件について原則刑事処分相当として検察官送致とする制度〕、逆送可能年齢の引き下げ〔14歳、15歳の少年も刑事処分が可能となった〕観護措置期間の延長〔最大8週間〕など新制度が創設されている。
 今回の第二次改正案では、他にも様々な論点があるのだが、今日は問題と思われるものとして、警察官への強制調査権限付与について論じていくことにする。
 まず、改正法案のうち警察官への強制調査権付与に関する部分を以下に抜粋する。以下に第164回とあるが、これは提出回であり、今国会(第166回)において平成19年4月1日現在、衆議院で審議中である。

第一六四回
閣第四四号

   少年法等の一部を改正する法律案

 (少年法の一部改正)

第一条 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)の一部を次のように改正する。

  目次を削り、題名の次に次の目次を付する。

 目次

  第一章 総則(第一条・第二条)

  第二章 少年の保護事件

   第一節 通則(第三条―第五条の三)

   第二節 通告、警察官の調査等(第六条―第七条)

   第三節 調査及び審判(第八条―第三十一条の二)

   第四節 抗告(第三十二条―第三十六条)

  第三章 成人の刑事事件(第三十七条―第三十九条)

  第四章 少年の刑事事件

   第一節 通則(第四十条)

   第二節 手続(第四十一条―第五十条)

   第三節 処分(第五十一条―第六十条)

  第五章 雑則(第六十一条)

  附則

  第二章第二節の節名を次のように改める。

     第二節 通告、警察官の調査等

  第六条第三項を削り、同条の次に次の五条を加える。

  (警察官等の調査)

 第六条の二 警察官は、第三条第一項第二号又は第三号に掲げる少年である疑いのある者を発見した場合において、必要があるときは、事件について調査をすることができる。

 2 前項の調査は、事案の真相を明らかにし、もつて少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。

 3 警察官は、国家公安委員会規則の定めるところにより、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警察官を除く。)に調査(第六条の四第一項の処分を除く。)をさせることができる。

  (呼出し、質問、報告の要求)

 第六条の三 警察官は、調査をするについて必要があるときは、少年、保護者又は参考人を呼び出し、質問することができる。

 2 警察官は、調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

  (押収、捜索、検証、鑑定嘱託)

 第六条の四 警察官は、第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件の調査をするについて必要があるときは、押収、捜索、検証又は鑑定の嘱託をすることができる。

 2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中、司法警察職員の行う押収、捜索、検証及び鑑定の嘱託に関する規定(同法第二百二十四条を除く。)は、前項の場合に、これを準用する。この場合において、これらの規定中「司法警察員」とあるのは「司法警察員たる警察官」と、「司法巡査」とあるのは「司法巡査たる警察官」と読み替えるほか、同法第四百九十九条第一項中「検察官」とあるのは「警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長」と、「政令」とあるのは「国家公安委員会規則」と、同条第二項中「国庫」とあるのは「当該都道府県警察又は警察署の属する都道府県」と読み替えるものとする。

  (警察官の送致等)

 第六条の五 警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。

  一 第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が第二十二条の二第一項各号に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。

  二 前号に掲げるもののほか、第三条第一項第二号に掲げる少年又は同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。

 2 警察官は、調査の結果、十四歳以上の少年に係る事件について、第三条第一項第三号に規定する審判に付すべき事由があると思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。

 3 警察官は、第一項の規定により児童相談所長に送致した事件について、児童福祉法第二十七条第一項第四号の措置がとられた場合において、証拠物があるときは、これを家庭裁判所に送付しなければならない。

 4 警察官は、第一項又は第二項の規定により事件を送致した場合を除き、児童福祉法第二十五条の規定により調査に係る少年を児童相談所に通告するときは、国家公安委員会規則の定めるところにより、児童相談所に対し、同法による措置をとるについて参考となる当該調査の概要及び結果を通知するものとする。
(以下略)



 「第三条第一項第二号又は第三号に掲げる少年」とは、触法少年(2号)・虞犯少年(3号)といって、触法少年は14歳未満で刑罰法令に触れる行為を行ったとされる少年、虞犯少年とは刑罰法令に触れる行為ではないが、@保護者の正当な監督に服しない性癖のある、A正当の理由がなく家庭に寄りつかない、B犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し,またはいかがわしい場所に出入りする、C自己または他人の徳性を害する行為をする性癖がある、といった一定の事由(虞犯事由)があって将来的に刑罰法規に触れる行為を犯す可能性が認められる少年のことをいう。
 少年事件については、14歳以上で犯罪を犯したという嫌疑を受けた少年(犯罪少年:少年法第3条1項1号)については、刑事訴訟法が準用され、警察官は刑事訴訟法上の司法警察職員として活動し、刑事訴訟法の規律を受けて捜査を行うことになる。
 今回の改正法案では、いままで警察の捜査活動の範囲外であった触法・虞犯少年を対象として、警察に調査権限を付与し、触法少年の事件については刑事訴訟法を準用し押収・捜索・検証・鑑定といった強制調査権(捜査権ではない)を付与しようとするものである。本法案では対物的強制処分に限定されているが、将来的には逮捕・勾留といった対人的強制処分権もこのような事件について警察に付与する構想が出てくるかもしれない。
 そもそも現行の少年法においても、家裁調査官による強制調査権は認められている。
(以下、現行少年法の関連条文を抜粋)
(証人尋問・鑑定・通訳・翻訳)
第十四条  家庭裁判所は、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。
2  刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。
(検証、押収、捜索)
第十五条  家庭裁判所は、検証、押収又は捜索をすることができる。
2  刑事訴訟法 中、裁判所の行う検証、押収及び捜索に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。

 このような司法機関たる家庭裁判所ではなく、警察に強制調査権を付与する必然性について十分な議論が尽くされているのであろうか。触法少年といえば、14歳以下であるから、小学生や中学生である。そもそも家裁調査官ではなく警察にこのような強制処分権を付与する必要性があるかどうか疑問である。
 もしこのような強制調査権が警察に付与されることになれば、いきなりパトカーが小学校に来て、小学校に対して制服の警察官が捜索・差押えを行ったり、小学生に対して「任意同行」を求めるような事も行われるようになりかねないのではないか。
 必要性と妥当性について、議論が尽くされないままに少年や教育現場に対して公権力が介入する制度が成立することを懸念しているところである。




posted by 一法律学徒 at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 法案・立法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月06日

タカ派元首相「改憲の歌」

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(写真は長崎平和公園の平和祈念像。敗戦時には、タカ派元首相のいうように「涙をのんで国民は憲法を迎えた」のであろうか。むしろ大多数の人は、焼け野原の中で、「戦争も軍ももうゴメン
だ」と本心から思っていた事と思う。)

 自民党を中心とする改憲派の国会議員から構成される団体である自主憲法期成議員同盟(新しい憲法をつくる議員同盟)の会長に就任しているのは中曽根康弘元総理大臣である。
 ちなみに、彼は1956年に以下のような「改憲の歌」を作詞している。

 鳴呼(ああ)戦(たたか)いに打ち破れ 敵の軍隊進駐す
平和民主の名の下に 占領憲法強制し
祖国の解体計りたり 時は終戦6ヶ月


 占領軍は命令す 若(も)しこの憲法用いずば
天皇の地位請け合わず 涙をのんで国民は
国の前途を憂(うれ)いつつ マック憲法迎えたり


 10年の時は永くして 自由は今や還りたり
我が憲法を打ち立てて 国の礎(いしずえ)築くべき
歴史の責を果たさんと 決意は胸に満ち満てり


 国を愛す真心を 自らたてて守るべき
自由と平和民主をば 我が憲法に刻むべき
原子時代に遅れざる 国の理想を刻まばや


 この憲法のある限り 無条件降伏つづくなり
マック憲法守れるは マ元帥の下僕(げぼく)なり
祖国の運命拓(ひら)く者 
興国(こうこく)の意気挙(あ)げなばや 
(以上)

 私は誤解を恐れずに言えば、今の憲法を改正する事そのものを否定するつもりは毛頭ない。問題はその内容と方法である。
 自民党の憲法改正案では、「自衛軍の設置」「軍事裁判所の設置」「環境権・プライバシー権など新たな人権規定の創設」「政教分離規定の改変」「犯罪被害者の人権」などが盛り込まれている。私はこのような改憲案については全く否定的であり、現在の状況において憲法「改正」がなされるのであればタカ派元首相がいう「マック憲法」の方がはるかにましな「憲法」となることは確実であろうと考えている。
 その立場から自民党改憲案について今後とも検討・批判を加えていくことにする。
 今日は「プライバシー権規定の創設」について検討していく。
そもそも「プライバシー」とは、欧米でも、日本でも判例によって確立されてきた権利であり、アメリカ合衆国では「国家から自らの私生活に干渉されない権利」として形成されてきたものである。日本では憲法13条の幸福追求権の規定から派生する権利として捉えられてきた。
 個人情報保護をめぐる議論においても、改憲議論においても、そもそもこのような「国家から干渉をうけない権利」としてよりも、むしろ「私人間において個人情報を知られない権利」として議論がすすんでいるように思える。「国家に対抗する権利」としてではなく、「国家により保護してもらえる権利」として捉えられている事に懸念を覚えるこの頃である。
 そもそも何が「プライバシー」かは非常に難しい問題であり、むやみやたらと「プライバシー権」を認めると、いわゆる人権のインフレ化を招来し、人々が常に「プライバシー侵害」を行ったとされる事を恐れながら行動しなければならなくなる。そのために判例もプライバシー権(肖像権など)の認定に関しては慎重な態度をとってきている。
 わざわざ憲法上明文でプライバシー権を規定することになれば、「プライバシー侵害防止」を理由に、報道規制等を「国家による自由実現」を口実としておこなわれる危険が大であるといえる。




posted by 一法律学徒 at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法改正問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

研究室開設にあたって

j@.bmp はじめまして。某法科大学院に通学中の一法律学徒です。
 近年、司法制度改革の名の下に様々な改革が行われています。
 明治時代に制定された文語体の民法は現代語化され、一般市民が職業裁判官と共に刑事裁判の審理に関与する「裁判員法」が成立し、国家の基本法である憲法すら改正されそうな気運です。
 法を学ぶ者の一人として、また現代社会に生きる者として、法制度・社会制度に関する思考を発信して議論していければと考えてこのブログを作りました。充実した交流・議論の場になることを願っております。
 堅苦しい記事だけでなく、趣味や日常のつれづれについても書いていこうと思っていますので、おつきあいいただければ幸いです。

 (写真はフランス破毀院〔Cour de cassation:司法最高裁判所〕です。裁判所の建物はパレ・ド・ジュスティス〔Palais de justice:正義の宮殿〕と言い、破毀院の他にパリ控訴院〔Cour d'appel:高裁〕、大審裁判所〔Tribunal de grande instance:地裁〕、重罪院〔Cour d'assies:重罪について陪審審理を行う刑事裁判所〕が同じ建物の中にある合同庁舎です。)


posted by 一法律学徒 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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